将来の不安から逃げる。

「将来、どうするの?」

たまに、そんなことを訊かれることがある。どうするのと言われても、分かりませんとしか言いようがないのだが、そんな答えを聞くと、みんな一様に不服そうな顔をする。将来の不安から逃げていることが許せないように思えるのだろう。

だが、先のことは考えないというのは、とても合理的なような気がする。

事実、世の中の大半の人は、先のことは考えないようにしている。

「将来、認知症になったらどうしよう」

「将来、脳梗塞になって体が動かなくなったらどうしよう」

そんなことを真剣に考え始めたら、日常生活はできなくなる。認知症や脳梗塞に対する恐怖だけで神経がまいってしまう。「自分が95歳まで生きて、一人ぼっちになったらどうしよう」などと考えたら、絶望的になってしまうので、大半の人は先のことは考えないようにしているのだ。

先のことを考えると不幸になる。

なんとなく、そう思う。

「将来」という言葉には必ず「老い」や「病気」が内包される。排泄がコントロールできなくなり、他人にその世話をしてもらう姿を思い描いたら、その屈辱だけで神経がまいってしまうだろう。

私のひきこもり生活がいつまで続くのか、分からない。だが、考えるのはせいぜい一週間先まで。それ以降は考えないようにしている。これは、私の身近にいる楽観的な人から教わった生き方である。

つまり、父だ。

父は先のことをほとんど考えない。「今日が楽しければいいじゃないか」という考え方で、これまでずっと生きてきた。そんな父は精神的に至って健康で、精神科などとは全く無縁である。私の見た感じでは、精神的に健康な人は、みんな先のことは考えていない。今日、もしくはこの一年の充実だけを考えている。それこそが、人間の正しい考え方なのだろう。

多かれ少なかれ、みんな将来の不安から逃げている。というより、将来の不安を直視してしまったら、それに押しつぶされてしまい、生きていけなくなるのだ。

私も、将来の不安から逃げ、今日一日の充実だけを考えようと思う。

なんとなく、私も父の健康的な生き方に近づいているような気がする……。

 

4 Responses to “将来の不安から逃げる。”

  1. 馬の助 Says:

    はじめまして、馬の助です。
    結局どんなに「勝ち組」だろうが「負け組」だろうが今生きてる人で150年後に生きている人って、いないと思います。それと、余程の例外を除いて150年後に皆から覚えられている人っていないです。人生ってそうなる(完全に消えて忘れ去られる)までの暇つぶしなんで、真剣に悩むに値しないです。負けたら負けたでそんな自分を優しく受け入れればいいだけの話なんです。引きこもっても逃げてもいい。ただ、確実にやってくる死からだけは逃げられないけど、あいつらもみんな150年以内に死ぬのだからざまぁ見やがれ。で、いいんじゃないですか?高級棺桶に入っていても死んだら一緒だし、棺桶に入らずに海に捨てられても一緒だと思う。150年たったら、今、吉野家で不味い牛丼クチャクチャ食ってようが、スマホに向かってわめき散らしながら上の空で高級ウナギを喰ってようが(これじゃ味、楽しめないよね。)灰になってます。でも、あいつらはやいのやいの、これから君どうすんの?ってやかましいんだよね。困った困った。
    と思いました。

  2. 二条淳也 Says:

    馬の助さん

    はじめまして、こんにちは。

    たしかに、150年後には誰も生きていないでしょうね。人生は死ぬまでの暇つぶしというのは、真理だと思います。できれば最初からこの世に生を受けなければ良かったというのが本音ですが、生まれてしまった以上、数十年暇つぶしをし続けなければならず、それがつらいですね。

    それにしても「吉野家で牛丼をクチャクチャ」というのは、とても面白い表現ですね。

    思わず吹き出してしまいました(笑)

  3. 馬の助 Says:

    早速のレスありがとうございます。
    僕もたまに、何で生まれてきたのだろう?宗教の人達は天国にいくじゃ、行かないじゃってうるさいので、一度、「神様なら、僕が最初っからいなかった事にだって出来るでしょう。そしたら死んだりしなくていいし。」と言ったら、「!#$%&!?!?」と叫ばれましたww 聞き取れなかったです。のび太と鉄人騎士団みたいに3万年前に行って、僕達がいなかった事に出来ればいいのですけどね。
    ところで、本当に老後まで安泰に暮らせる人って「まじめに働いているみんな」と言う訳じゃないですよね。
    自分で払った年金以外に政府から何の援助も受けずに100歳まで暮らせる人ってそんなにいないと思います。だから、逆に将来の心配はそれほどしなくてもいいと思いますよ。これから何百万人も何千万人も老後難民が出るから、自分ひとりだけああだこうだ、皆はぬくぬくと…みたいにはならないと思います。ひきこもり高齢者もそれほど珍しくなくなると思います。

  4. 二条淳也 Says:

    馬の助さん

    最初から生まれてこなければ、こんなに苦しまずに済んだのに、と思う人はけっこういるみたいですね。

    馬の助さんがおっしゃるように、まじめに働いていても、老後は安泰に暮らせるかどうか、分かりませんよね。100歳まで何の援助も受けずに暮らせる人なんて、ほとんどいないですよね。その意味では、あんまり心配する必要はないかもしれませんね。老後難民は、本当に驚くほど沢山出るでしょうね。

    消費税がきちんと福祉に遣われるなら、みんな拠出すると思うのですが。

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