わりとうまくいった職場。
人間関係が不器用なので、短いスパンで職業をどんどん変えていったが、なかにはわりと続いた職場もある。そのなかの一つを紹介したい。
ある割烹料理屋なのだが、その店には合計五年近くいた。人間関係が悪くなかったため、長く続いたのだ。
人間関係が悪くなかった理由はただ一つ。従業員の人数である。
その店には、従業員が二人しかいなかったのだ。板前さんと私。その二人だけである。これでは人間関係が悪くなりようがない。私をいじめたら、板前さんも孤立するのだ。両者の不仲がそのまま営業に影響してしまうのだ。
板前さんは、私のことをしごきつつ、必死に仕事を教えてくれた。私がふくれっ面をしている時は、ペコペコ誤りながら、なだめてくれたこともあった。
従業員五百人の工場なら、一人いなくなっても、まったく影響はない。だが、従業員二名の割烹料理屋は訳が違う。一人欠けたら、次の日から営業できなくなるのだ。私は皿洗いもお運びもレジも調理補助もやっていたが、その私がいなくなったら、もう板前さんはギブアップである。だから、板前さんは私に気を遣ってくれたのだ。
従業員が少なすぎるというのは、私にとってプラスにはたらいた。「俺がいなければ、店はまわらないんだ」という自信があったため、わりと楽しく働くことができた。今まで、さんざん「代わりならいくらでもいる」と言われながら働いてきたけど、この職場に限っては、「俺がいなければ」という自負があったので、それほど仕事がイヤではなかったのだ。
従業員二名といっても、人間同士だから、やはり衝突はある。だが、その場合も、突然姿をくらまして辞めるようなことはなく、板前さんとの話し合いで解決することができた。辞められては困るという意識があると、雇用する側も、かなり気を遣ってくれるのだ。
思い出したくもないような職場が沢山あるなかで、この料理屋は、それほど悪くなかった部類である。というか、仕事帰りに板前さんとおでんを食べたことなどは、今でもいい思い出として、私のなかに残っている。
「従業員があまりにも少ない職場」というのは、ひきこもりの人にとって、それほど悪くないように思えるのだけど。
6月 20th, 2012 at 7:58 PM
仕事帰りに一緒に食事って良いエピソードですね。
転職って当たり外れが大きくてギャンブルのようです(^_^;)
6月 22nd, 2012 at 1:09 AM
みみさん
はい。楽しい思い出として、温かく私の中に残っています。
みみさんのおっしゃる通り、転職はまさしくギャンブルですね! ハズレが多いという意味でも(笑)