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感謝
騎士たちが帰っていった後、リトネとサブロウは話し合う。
「それじゃ、『風の墓場』の実際の管理と運営はフーマ家でお願いします。一応ゴールド様をトップにして鉱山を任せますが、シャイロック家には採掘のノウハウはありませんので。各地から労働者を集めて送るのは当方で行います」
「はい……」
サブロウはそう返事をするも、どこか浮かない顔をしていた。やむをえない事情とはいえ、自分の領地の一部を没収されたうえ、権利ももたない高山の採掘の仕事を割り当てられるのだから当然である。
これからのフーマ家の財政を思って暗い気分に沈んでいた。
しかし、リトネは明るく笑ってサブロウを励ました。
「心配いりませんよ。おそらくフーマ家はこれから大発展するでしょう。あの場では言いませんでしたが、フーマ家にもある特権が与えられます」
「特権……ですか?」
それを聞いて、サブロウは首をかしげる。鉱山の権利はシャイロック家とほかの騎士家に分割され、フーマ家には何も残っていないはずである。
「ふふ。実はこんなものを作ってみました」
リトネは何かの地図を広げる。そこには、『風の墓場』の近くにある平原の地図が区画整理した状態で描かれていた。
「これは?」
「ここに鉱山労働者たちの宿と、彼らに食事や物を売る商店、そして商人たちに魔石を卸す市場を作ります。その手配をすべてフーマ家に任せたいと思います。彼らに物を売った利益や地代、魔石取引にかかわる手数料などを、すべて仕切れば……」
それを聞いて、サブロウの顔に歓喜が浮かぶ。あまり知られていないが、ゴールドラッシュなどがおきた土地で一番儲ける者は、金を掘り当てた者などではなく、集まった人間を相手に商売を始めた者なのである。
「リトネ様、ありがとうございました!」
サブロウは自分たちのこともちゃんと考えてくれるリトネに深く感謝する。
こうして風の墓場の権利分割は、誰も不満をもたせることなくスムーズに行われたのであった。
アンデス領
騎士たちが勢ぞろいして、リトネを見送る。
「勇者リトネ様!アンデス領を救ってくださいまして、ありがとうございました!」
「我ら一同、リトネ様に絶対の忠誠を誓わせていただきます」
彼らの礼に笑って答え、リトネはゴールドに申し渡す。
「では、ゴールド様、引き続きこの地をお願いします」
「ううう……リトネ様のけち。私も帰りたいのに」
対するゴールドは渋い顔をしている。結局引き続きゴールドがアンデス領の領地代行をすることになったからである。
「仕方ないでしょう。ゴールド様以外に信頼してこの広大な領地を任せられる人がいないんですから。風の墓場の鉱山のこともありますし」
シャイロック家はアッシリア領とアンデス領を併合したので、急速に領地が拡大した。それはよいことなのだが、そこを支配する人材が不足しているのである。
「ゴールド様、新しい商業地の開発もよろしくお願いいたす」
リトネに直接仕えることになったサブロウも、手を握って後のことを頼み込んだ。
「……ううう……領主代行に加えて鉱山経営に町の開発……仕事が増えるぅ」
「お父様は既にシャイロック家の重鎮。我がままいわない」
娘であるナディからもそういわれてしまい、ますますゴールドは落ち込んだ。
「はあ……昔の私はなぜシャイロック家の跡継ぎになどなりたいと思っていたのか。地位が上がるにつれて、仕事が増えて責任が重くなるばかりで、家族はバラバラ……もうゴロンポ村に帰りたい」
下を向いて日本の転勤族みたいに愚痴るゴールドの耳元で、リトネはそっと囁く。
(エルフシリーズの新刊を送りますから)
(本当ですか!わかりました!がんばります!)
急に元気を取り戻し、ゴールドはにこやかにリトネたちを見送る。
「勇者リトネ様!」
「勇者の伝説を継ぐ者!」
民衆の感謝の声を浴びながら、リトネはシャイロック領に帰っていった。]]

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