好かれていない!

「二条。お前、髪の短い女の子が好きなんだろ? 俺が紹介してやるから、今度四人でデートしようぜ」

クラスメイトのE君がこんなことを言ってきたのは、たしか高校二年の頃だったと思う。髪の短い女の子が好きなことを、どういう経緯で彼が知ったのかよく分からないけれど、とにかく彼のはからいで、四人でデートすることになった。今思えば、E君もまた、私をダシにして、彼女を作ろうとしていたようだった。

当日、私はドキドキして、朝からとても緊張していた。それはそうだろう。顔も知らない女の子とデートするのだ。彼女について知っている情報は「ショートカットである」というだけで、どんな子なのか、まったく分からない。十六歳の私は、持てるだけのお金を持って、待ち合わせ場所のファーストフード店に向かった。

待ち合わせ場所にいたのは、たしかに「髪が短い」のだけど、あまりタイプではない女の子だった。

私は彼女を前にして、何を話せばいいのか、まったく分からなかった。隣にいるE君は、もう一人の女の子とずっと喋っている。私が話すべき相手はショートカットの子であり、彼女もまた、私のことを担当しなければならない。お互い、もじもじしながら、面白くもないようなことを喋った。

ファーストフード店で食事したあと、四人でボーリングへ行き、それでその日は終わったのだけど、ショートカットの子と別れるまで、どうしても彼女に電話番号を訊く気になれなかった。タイプではないとはいえ、せっかくE君が紹介してくれた女の子である。正直「誰でもいいから」彼女が欲しいという気持ちもあった。だが、どうしても、私は電話番号が訊けなかった。

ショートカットの子と会って十分ぐらいで、彼女が私のことをまるで相手にしていないことが、私にはハッキリ分かっていた。一応、私の問いかけには答えてくれていたものの、彼女の目は私に対して、

(あなたのこと、興味ないのよね)

とハッキリ物語っていた。敏感な私は、それを充分感じ取っており、電話番号を訊いても訊くだけムダだと分かっていたのだ(彼女はまず教えなかっただろう)。

「せっかく紹介してやったのに、どうして電話番号訊かなかったんだよ」

そうE君は問い詰めるのだが、その問いかけに、私は何も答えられなかった。

ある程度鈍感な人なら、「彼女が欲しい」という一心で電話番号を訊いたかもしれない。だが、私は相手に好かれていないことを、ものの十分で気付いてしまった。感じ取ってしまったものはしょうがないけれど、それにしても神経が敏感というのは厄介だと思った。アタックする前から敵前逃亡してしまうのだから。

もう一度あの頃に戻ったら、今度は「試しに」電話番号を訊いてみたい気がする。

「敵前逃亡」よりは「断られる」ことのほうがはるかに得るものがあると、今の私は知っているのだから。

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