繊細かつ無神経。
知人にM子さんという女性がいるのだが、彼女はとても傷つきやすい。誰かから言われた何気ない一言を、ずっと気にしてしまう。悪意のない一言を、いつまでも真剣に考え込んでしまうような人なのだ。
ところが、そのM子さんが、女友達に平然と、
「あんた、ずいぶん太ったねえ!」
と言っているのを目にして、唖然としてしまった。あれほど傷つきやすいM子さんが、他人には平気で傷つくようなことを言ってしまう。それを見て、「この人は生きていく上で、困難が多いだろうなあ」と思ってしまった。
だが、よく考えれば、私も同じなのだ。私もまた、自分は傷つきやすいくせに、他人には無神経なことを言ってしまう。
以前、友人だと思っていたY君が、私のことを「この人は、友達ではなく知り合いだ」と言っているのを知って、かなりこたえたことがある。ああ、この人にとって、自分は友達ではなく知り合いなんだと思うと、少なからずショックを受けたものだ。
ところが、そんな私が、何年も付き合っている男性に対して、
「キミとは友達でもなんでもないのだから」
などと平気で言ってしまう。私もまた、「自分は傷つきやすいけど他人には無神経」な者のうちの一人である。こんなことを言ったあと、しばらくして「ああ、あんな言い方するんじゃなかった」と後悔するのだが、後悔しても間に合わないことが多く、大抵の場合、人間関係の悪化というかたちで、自分の身に返ってくる。
繊細だけど無神経。そんな人は、世の中にかなり多いのではないか。
自分が言われたら傷つくことを、他人には平気で言ってしまう。これは、注意すれば治せるように見えるが、なかなか治し難いことだと思う。その言葉を言う前に、一呼吸置いて考えれば良いのだろうけど、なかなかそういうわけにもいかず、言ったあとで後悔するパターンが多い。私は今まで、大勢の人から無神経なことを言われて傷ついてきたけれど、それと同じぐらい、大勢の人を傷付けてきたのではないか。それが世の中だと言ってしまえばそれでお終いだけれど、無神経な発言というのは、やはり出来る限り避けたい。
ひきこもりたちにとって、円滑な人間関係の構築というのは、第一級の課題だからだ。