【2016年7月6日】
最近の仏教のデジタル化事情について、本物のお坊さんに聞いてみた【後編】〜仏教にテクノロジーを取り入れると「ありがたみ」がなくなりませんか?〜
前編からの続きです。

本物のお坊さんに「仏教のデジタル化」についてお話を聞こう、という趣旨の対談。
場所は浄土宗の大本山・増上寺をお借りしました。
増上寺で修行を積まれた小路さんにお寺を案内していただきながら、お話は続きます。
前編をまだ読んでない方は、そちらも合わせてどうぞ。
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小路さんのTwitter:@KOJIRYUJI1
■お坊さんにBLの話をぶっこんでみたら……

BLって知ってます?

……!

(この反応、知ってるな)最近、BLで密かなブームが来ているのが
「お坊さんBL」、略して
ボーズラブなんですけど、やっぱり
うちとしてはちょっとそのあたりの話も聞いておかなきゃなって。

……。

……あの。

はい。

この対談って、ネットで公開されるんですよね?

もちろんですよ。

……。
ノーコメントとさせてください。

えっ。

実はカフェオレ・ライターで対談という話を聞いたとき、
これはBLの話がくるなと思ったので、BLについても調べてきたし、なんだったら
お坊さんBLにも目を通してきたのですが。
読んだのかよ。

個人的には語りたいことは山ほどあるのですが、私にも
善立寺副住職かつ妻子持ちという立場がありますので、ちょっと
公開の場ではコメントできかねます。
ですよね! いや、そりゃそうだろうと思っていたので、むしろ予習してきていただいたことにびっくりですよ。

申し訳ありません。

……ん? 「公開の場ではコメントできない」ということは、
非公開の場ならコメントできるってことですか?
……ノーコメントとさせてください。
(ありだな、これは)じゃあ、いつかそういう場を設けることができたら出演してくださいね。

……。
徳川将軍家墓所 鋳抜門へやってきました。この日は閉門していて入れなかったのですが、この奥には徳川将軍家墓所があります。旧徳川家霊廟は残念ながら戦災で焼失したそうですが、二代秀忠公の墓所や静寛院宮の宝塔などを見ることができます。
「門の質感を確かめるようにさわってみてください」という僕からのよくわからないお願いに戸惑いながらもポーズをとってくれる小路さん。
■そもそも、どうしてデジタル御朱印を作ったの?

話もついたところで、そろそろ対談の本来の趣旨である
「仏教のデジタル化」について聞かせてください。

聞きたいことはいろいろあるんですが……とりあえず、どうしてQRコードとNFCつきのデジタル御朱印を作ったんですか?

それはですね、お寺や仏教のことをもっと広く知っていただきたかったからです。これまでもお寺を訪問してくださった方に御朱印をお渡ししていたわけですが、それで終わっていたんですね。でもQRコードやNFCをつけておけば、御朱印帳をめくったときにもう一度アクセスしてくれるんじゃないかと考えたのです。

なるほど……! そんな思いがあったとは……。

でも御朱印までもらったお寺のことを簡単に忘れるもんですかね。

御朱印を集めるのが趣味の方もいて、そういう方は御朱印を
数千とかコレクションされているんですよ。そうなるとなかなか難しいです。
御朱印コレクター……いろんな世界があるな……。

話は変わりますが、お坊さんの世界って宗教上禁止されているものがありますよね。

そうですね。正確にいうと、明確に禁止されているものは
「律」といい、罰則があるわけではないけれど自ら避けるべきものは
「戒」と呼びます。

あ、戒律っていいますもんね。

ええ。ちなみに基本的な戒は5つあり、「殺生」「盗み」「浮気」「嘘」「飲酒」です。ただし、飲酒については「他の戒を犯しやすくする」という理由で戒になっているので、逆にいうと他の戒を守れるなら必ずしもNGではありません。

なるほど。ちなみに「浮気」って、どこからが浮気になるんですか? 他の戒はわかりやすいけど、浮気は人によって定義が違うじゃないですか。たとえば
女性と二人でご飯を食べたらもうアウトなのか、とか。

いい質問ですね。仏教には
「身語意」という考え方があります。身体と言葉と意思のことで、「戒」とはそのすべてにあてはまるのです。浮気の場合、身体と言葉は言うまでもありませんが、「意思」もNGなので
「浮気したい」と思った時点でアウトです。

なるほど。逆に「意思」がなければセーフなんですね。まぁ仕事の打ち合わせでご飯くらい食べることもありえますもんね。

はい。それから、先ほども言った通り、そもそも「戒」は自分の心の問題で、罰則があるわけではないので、浮気したからといってお寺業界から追放されるとかそういうことはありません。

へえ〜。

ただし、
私は婿養子なので浮気したらお寺からも家庭からも追放されますが。

でしょうね!
増上寺で一番大きな建物「大殿」の2階裏手にやってきました。ここは小路さんおすすめの東京タワーのビュースポット。
「夜になるとカップルだらけになるんですけどね……!」と小路さんが阿修羅のような表情でつぶやいていました。
■デジタル化すると「ありがたみ」がなくなりませんか?

さて、やっと「仏教のデジタル化」についての話なのですが、そもそも仏教に対してデジタルのイメージってまったくなかったんですよ。皆もそうだったから、あの「御朱In」があれだけバズったんでしょうけど。

私も僧侶になるまではお寺といえばアナログなイメージでしたね。

ですよね。でも実際にはお坊さんもデジタル機器をバリバリ使いこなしてるんですか? 先ほど「戒律」についてお聞きしましたが、デジタル機器は禁止されていないですよね。

少なくとも
40代以下の若い僧侶は皆スマホを持っていますよ。私も若手僧侶の知人がたくさんいますが、LINEやGmail、Facebookメッセンジャーなどでやりとりしています。

……なんか、お坊さんの口からGmailとかFacebookっていう単語が出てくるとものすごく違和感ありますね。

まぁそのあたりは年配の僧侶の方は使われてないかもしれませんが、PCはもうどのお寺にも当たり前にありますね。何か書類を書くときに筆を使うお寺はほとんどないんじゃないでしょうか。皆PCです。

そういえば昔、「トリビアの泉」という番組で
「卒塔婆に文字を印刷する専用のプリンター」があるって話を見ました。

ああ、ありますね。そもそも仏具も
カタログ通販で業者さんから買ってますし。

えっ、そうなんだ。……でも確かに衣とか木魚とか自分では作れないですもんね。

そうですそうです。お香も、お札も、お守りも
「一ついくら、100個ならいくら」みたいな感じで問屋さんから買うんです。

言われてみればそりゃそうなんですけど、生々しい話だなぁ。

まさにですね、今日はそこの部分を聞きたかったんですよ。小路さんが仏教にデジタルやテクノロジーを取り入れることで、仏教が身近になるのはよくわかりました。
でもね、宗教って
アナログなところが「ありがたみ」なんじゃないかって思うんです。御朱印がデジタル化したり、法話の原稿をPCで作ったりしていることを公開すると、
親しみが増すかわりに俗っぽくなりませんか?

たしかにそういう側面はあるでしょうね。宗教の「わからなさ」が、畏敬の念につながっていることは否定できません。

個人的には宗教にテクノロジーが入っていくのって超おもしろいって思うんですけどね。そういうの、がっかりする人もいそうじゃないですか。

はい。なので御朱Inも、デジタルやテクノロジーを取り入れることも、情報を開示することも、今は賛否両論です。

しかし、私個人の考えとしては、
デジタル化したところで仏教の神聖性は失われることはないと思っています。
というのも、私たち僧侶の役目とは
「生きること、老いること、病むこと、死ぬこと、」について皆さんに伝えることなのです。その「伝える内容」は時代が変わっても揺らぐことはありません。一方で、
「伝え方」は時代と共に変わるべきだろうと思うのです。

あ、言われてみれば小路さんがチャレンジしているのって、すべて「伝え方」の部分ですよね。

そうです。仏教はこれまで、神秘性のベールで身を守ってきました。昔はそれでもよかったのでしょうけど、これだけ情報化社会になるとそうはいきません。お寺側から積極的に発信していかないと成り立たなくなってきたのです。

昔と今で何が違うんですかね?

一般論ですが、戦後、欧米の価値観が入ってきて家長制がなくなりました。人は家や土地に縛られなくなり、好きな場所に住み始めました。他所の土地に出て行く人もいれば、新しく入ってくる人もいます。そうした方々にきちんとお寺側から発信していかないといけなくなってきたのです。

昔は人の移動が少なかったから、お寺を選ぶなんてことは考えなかったんですね。でも今はお寺も選ばれるようにがんばらないといけないってことですか……。

そういうことですね。ま、それはさておき、私が俗っぽいことは否定しませんけどね。たまに檀家さんから
「幽霊とか見えるんですか?」って聞かれて、「見えません」って答えるとがっかりされるんですけど、そんな俗っぽい私だからこそ伝えられることがあると思っています。
■現在開発中の新たなデジタルお寺グッズ

よくわかりました! マジメな話はこのへんにして、御朱In以外にもいろいろ考えているデジタルお寺グッズがあると聞いたんですが。

はい、現在絶賛開発中なのですが、まずは
「スマホ座布団」です。
なんですか、これ……。

もとは「鈴の座布団」というもので、仏壇の前に置いて鐘を鳴らすものです。本当はその後、お経を読むのですが、檀家さんの中には
「お経の読み方がわからない」と仰る方もおられまして、それを解決するために作りました。

どう使うんですか?

これはですね、一見すると普通の「鈴の座布団」なのですが、中にNFCを仕込んでいまして、
スマホを乗せるとYoutubeが開き、鐘の音とお経が流れます。

うわ、ホントだ! すごい!
すごいけど、いいのかなこういうのでって思っちゃう。

それから、こちらは
「NFCお守り」。これも中にNFCを仕込んでいまして、好きなURLを書き込めるようになっています。

?????

たとえば安産祈願とか合格祈願とか愛のメッセージとか、なんでもいいのですが
応援メッセージなんかを動画で用意しておいて、限定公開でYoutubeにアップし、そのURLを書き込んでおきます。で、もらった人がお守りにスマホを近づけると、自動的にその動画が再生されるというわけです。
プレゼントにおひとついかがでしょうか。

すげえ。けど、
お守りってそういうもんでしたっけ。

そういうものなんです。

いやもう、今日はいろいろなお話を聞けてお腹いっぱいです……。御朱In以外のデジタルグッズも完成を楽しみにしていますね。

はい。正式にローンチしたらリリースをお送りさせていただきますね。

言い回しが完全にIT業界の人間やないか。

……はい、ということで前後編の2回に分けてお送りした「元エンジニアの僧侶に聞く、最近の仏教のデジタル化事情」いかがだったでしょうか。
かなり濃厚でリアルな現代仏教のお話が聞けたんじゃないかと思います。
これを機に仏教やお寺に興味を持ったなら、最近のお寺はFacebookページなどを作っているところが多いので、そこからコンタクトをとるなりして実際に訪問してみるといいんじゃないかと思います。
なお、
ボーイズラブならぬボーズラブの話については、いつかどこかでもう一度ぶっこんでみたいと思います。そのときはよろしくお願いしますね、小路さん!
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