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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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忍者

活動報告に一巻の情報を掲載しました。
数日後
領都ナスカではリトネを称える祭りが行われていた。
「勇者リトネ様、万歳!」
「勇者の伝説を継ぐものが現れた!」
街の民衆はグールの脅威とつめたい風から解放してくれたリトネを称える。
「ち、ちょっとこれは大げさなんじゃ……」
ナスカ城のテラスから外を見たリトネは、あまりにも崇められていてちょっと引いていた。
「何をおっしゃいます!リトネ様はまさにアンデス領の救世主でございます!」
外に出て初めて風の墓場が魔石の大鉱脈になっていることを知ったサブロウは、終始笑顔を浮かべて絶やさない。
「別に狙っていたわけじゃないんですけど……」
「いえ。すべて勇者リトネ様のおかげです」
興奮したサブロウは、薄い本を差し出す。
「これは?」
「リトネ様のご活躍を後世にまで伝えるために、急遽作らせました絵本です。民には飛ぶように売れているようです」
その本の題名は、「勇者リトネの竜退治」と書かれていた。
「なになに……勇者アルテミックの子孫、勇者リトネは邪悪なる竜を倒し、竜にさらわれた美しい少女を助けました。そして冷たい風を止めて世界を救いました。竜がためていた魔石を手に入れて、少女と末永く幸せに暮らしました……って!内容にかなり嘘が含まれているんですけど」
リトネはアルテミックの子孫などではなく、風が止んだことも魔石のことも、別にリトネが狙ってしたことではない。
「良いのです。誰の迷惑もかからぬ喜ばれる嘘は、民にとって必要なのです。すでに里のものに命じてすべての村に絵本を届けておきました」
サブロウはドヤ顔で言い放つ。
「……で、なんで竜にさらわれたヒロインの名前がサブロウになっているの?」
冷たい声が聞こえてきて後ろを向くと、ナディたち婚約者たちが絵本を持って立っていた。
全員が不機嫌な顔をしている。
「脚色でござる」
サブロウはしれっとした顔で言い放つ。
「あんた男でしょうが!」
「なんでキスシーンが濃厚に書かれているんだよ!お子様向けの絵本だろうが!」
「……」
リトルレットとトーラが怒鳴り、リンは絵本を読んで顔を真っ赤にしている。
どうやら彼女たちは存在すら抹消されてしまったようだった。
「きゅいきゅい!」
リンの頭の上でミルキーも抗議している。ちなみにミルキーはヒロインがもっているぬいぐるみにされてしまっている。
「……ワラワがヒロインを攫った、ドラゴンの手下の緑色のゴブリンというのは?」
マザーの声にも怒りが含まれていた。
「……創作でござる」
サブロウはちょっと顔を引きつらせながらも、抗議をつっばねる。
「ふざけるな!」
サブロウはヒロインたちとマザーによって、ボコボコにされてしまうのだった。

領都ナスカ
玉座の間に呼ばれたサブロウは、リトネの前に跪いていた。
「リトネ様、参上いたしました」
相変わらず白い装束を着たサブロウが丁寧に挨拶する。
しかし、リトネは彼を気遣った。
「……大丈夫ですか?」
「問題ござらん。マザー様のご加護のおかげで、どんな怪我もすぐに治ります」
顔に大きなあざを作ったサブロウが笑うが、実はあれから三日間救護室で寝込んでいて、今日ようやく怪我が治ったのである。
それだけヒロインたちから受けた折檻がすさまじかったのであった。
リトネはひとつ咳払いして、本題にはいる。
「こほん。サブロウさんはあんなに早く絵本を作って配っていましたが、もしかしてそういうのが得意とか?」
「はっ。フーマの里のものは、普段から何かあったときにすぐに伝えられるように、絵と文の訓練をつんでおるのでござる」
サブロウは自慢そうに胸をそらす。
それを聞いてリトネは考え込んだ。
(なるほど。フーマの里ってなんか忍者っぽいもんな。忍者の専門は諜報活動。時には文書を作って情報を伝達したり、拡散するといったこともできるわけか。これはうまくすると……)
リトネはあることをフーマの一族に任せようと思う。
「サブロウさん。フーマの里の人にある仕事をしてもらいたいのですが」
「何でもおっしゃってください」
サブロウはリトネに頼られることが嬉しいらしく、笑顔で頭を下げた。
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