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怪我の功名
泣くだけ泣いて落ち着いたフェザードラゴンは、ついにあきらめる。
「仕方ねえ。だがそこの坊主!ムスメを泣かすようなことがあったら……」
「わ、わかりました!ミルキーは俺が全力で守ります」
あわててリトネはフェザーに頭を下げる。
フェザーは改めてリトネをジロジロとみて、フンっと鼻で笑った。
「けっ。その程度の力で守れるかよ!俺の鼻息ひとつで吹き飛ばせるぜ!」
「あまり責めるではない。リトネはまだ修業中じゃ」
マザーがそういってフォローするも、フェザーは納得しなかった。
「いーや。この程度じゃムスメを守れねえ。仕方ねえ。そこの餓鬼!」
「は、はい!」
いきなりフェザードラゴンからすさまじい魔力が立ち上ったので、リトネはビビる。
「後でフジ山にこい!最低でもアルテミックぐらいの力がないと、ムスメを任せられねえ!俺が徹底的に鍛えてやる!」
なぜかリトネの修業を請け負うフェザーだった。
「い、いや、俺は師匠に修業をつけてもらっていますから!」
本当に怖くなって、リトネはマザーの後ろに隠れる。
しかし、マザーによって頭をつかまれ、フェザーの前に放り出されてしまった。
「し、師匠?」
「旦那、数百年ぶりにいいことを言ったな」
そういうマザーはニヤニヤと笑っている。その笑顔をみて、このふたりは似た物夫婦だと確信してしまった。
「どの道、次の『雲竜拳』の修業の相手は我らドラゴンじゃ。どうせなら最強の竜である旦那に鍛えてもらうがよい」
「おう!もっとも、容赦しねえけどな。もし耐えられなくて死んでも、無駄がないように食らってやるよ」
そういってフェザーは大きな口を開けて笑う。ギザギザの牙がきらりと光った。
「ひ、ひいっ!」
「いいか!俺もなまった体を鍛え直さなきゃならねえ!その準備にしばらくかかる。一ヶ月後に絶対にフジ山にこいよ。こなかったらマジで人間を滅ぼしてやるからな」
フェザーはにやっと笑うと、空に飛び立っていった。
「し、師匠!なんてことを!」
「大丈夫じゃ。我ら竜に食事は不要。食べられることはないじゃろう」
「そういうことじゃなくてですね!」
ギャーギャーと抗議するが、マザーは聞く耳持たない。
婚約者たちも関わり合いを避けるかのように、リトネから距離をとる。。
「えっと……」
リトネが何か言う前に、ナディたちは慌てて言った。
「……リトネ、がんばって」
「えっと、ボクは発明品の改良に忙しいし」
「そういえば、運送業の書類仕事がたまっているな……いやー、商売も大変だぜ!」
全員が目を泳がせていた。
「おにいちゃん、私が……」
「い、いや!リンはいいよ!ニワトリたちの世話をしていてくれ!仕方ないな……」
リトネは一ヵ月後に始まる地獄の修業を予感して、落ち込む。
(勇者とは……なんと過酷な運命を背負っておられるのだろうか……)
そうおもって心の中で合掌するサブロウだった。
フーマの里コダワラ村
そこでは、ゴールドをはじめとする騎士たちがリトネの帰りを待っていた。
「リトネ様はご無事であろうか?」
「何か、とてつもない魔力を持った存在が地下にいることを感じるぞ」
封印が解けた風の墓場の近くにいることで、彼らにも何か禍々しい存在がいることを感じ取っていた。
「だ、大丈夫だ。勇者リトネ様はマザードラゴンの加護を得ている。必ず帰ってこられる……」
ゴールドがそういって安心させようとしたとき、いきなりドーンという音がする。
「なんだ!」
次の瞬間、地面が激しく震えた。
「地震?ばかな?」
「この400年、一度もこんなことはなかったのに!」
何かとんでもないことが起こっているのではないかと、不安になる。
「ここで指をくわえて待っていても、埒が明かん!」
「……ええい!私は勇者様のところに行くぞ!」
ゴールドがとめる間もなく、騎士たちは里を出て風の墓場に向かう。
馬に乗って走っていると、すぐに異常に気がついた。
「おい!何か変だぞ」
「風がやんでいる……」
アンデス領に一年中吹いていたせいで、この地を不毛に変えていた冷たい風がやんでいる。
「何が起こっているんだ……」
「これは良いことなのか?それとも……」
馬に鞭を当て、必死に走らせる。
風の墓場についた彼らは、呆然としてつぶやいた。
「風の墓場が……ない」
多くの墓石が散らばる広大な丘が、綺麗さっぱり吹き飛んで、大穴が開いている。
騎士たちの一人が恐る恐る馬から下りて近づくと、何かに躓いた。
「いてっ!あれ?これは……」
躓いた石を拾い上げた騎士は、そのまま固まってしまう。
「おい!どうした!え?」
あわてて近づいて肩をゆすった別の騎士は、彼が持っている石に気がついて驚く。
「それは魔石か?そんな大きなものがなぜ……え?」
あたりを見渡して驚く。風の墓場のあったところに、大量に魔石が散らばっている。
あわてて大きな穴を覗き込むと、中には魔石の大鉱脈ができていた。
「奇跡だ!」
「これだけの魔石があれば、アンデス領は数百年は繁栄を約束される!」
抱き合って喜ぶ騎士たち。フェザードラゴンが400年も封印されていたことで、ダンジョンの石が魔力を帯びて魔石に変わっていたのだった。
「あれ?皆さん、どうしたんですか?」
穴から出てきたリトネたちは、喜ぶ騎士たちを見て首をかしげる。
「勇者リトネ様!ありがとうございます!」
「救世主さま!」
フェザードラゴンが封印されていたことによってこの地に吹いていた冷たい風を止め、魔石の大鉱山となった風の墓場を解放したことで、リトネはさらに崇められてしまうのだった。
新小説投稿サイト「カクヨミ」にて新作を投稿したので、お知らせさせていただきます。
よろしければ評価をお願いいたします。
元ニートは大家を目指す
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154895726
穢れた救世主は復讐する~『最後の審判ゲーム』~
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154878348

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