良い辞めかた。

今まで三十以上の仕事を経験してきたけれど、円満に退職したことがほとんどない。ストレスがガマンしきれないほど溜まった時、突然姿をくらましたり、不満をぶちまけて辞めたりしてきた。「今までごくろうさまでした」と言われて、すがすがしく退職したことがほとんどない。我ながら、問題のある人物だと思う。

「ひきこもりの就労についてアドバイスを」と言われたら、「良い辞めかたを学んで下さい」と言うと思う。就労に失敗し続けている私にアドバイスを求める人など、まずいないだろうが、もしいたら、そんな助言をすると思う。「仕事を長く続けること」よりも、まずは「良い辞めかたを学ぶこと」のほうが大事だと思うのだ。

私の辞めかたで一番多かったのが、それまでじっとガマンし続け、そして「もうダメだ」と思った日に、「今日で辞めます」と告げて来なくなるパターンだった。職場の人は、それまで一度も不満を口にしたことがない私が、突然辞めると言いだしたので唖然としているのだが、私のほうはすでにガマンしきれないほどストレスが溜まっており、続けることは不可能になっている。ある日突然「辞めます」と言うのだから、無責任という他ないが、後任のことなど考える余裕はなく、プイッとふくれっ面をして辞めていくのが常だった。

これは非常に悪い辞めかたである。

人間関係などで不満があれば、辞める前に上司に相談するべきであり、いきなり辞めるのは社会人として、どうかと思う。私が従事してきたのは、ほとんどが非正規雇用なのだが、それにしたって、常識というものがある。人間関係につまづくことが多かったのは事実だが、その原因は、私の非常識さも関係しているかもしれない。

ある日突然姿をくらまして辞めるのは、いかにもまずいと思って、一応「辞めます」と告げるのだが、次の日から来なくなるのだから、「突然失踪型」とあまり変わりないかもしれない。

それにしても、ある日突然「辞めます」と告げる時の恐怖はそうとうなものである。正直、相手に何かされるのではないかという、強い不安を感じる。逆に言えば、自分の行為が社会的に非常識であることぐらいは、私も自覚していたのだ。だが、それ以上、その環境に耐えられないのも事実だった。

ひきこもりの皆さんは、仕事を長く続けることよりも、まずは良い辞めかたを学んで欲しい。

悪い辞めかたをすると、働くのがどんどん怖くなっていくから。

Leave a Reply