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虚竜拳(重)
『仕方がないのぅ……リトネ、何をやっておる!』
『師匠、元に戻ったんですか?』
『ああ。それより、貴様はせっかくの『虚竜拳』を半分しか使いこなしておらぬではないか。なぜもう一つの『虚竜拳』を使ってシーフの動きをとめぬのじゃ』
『もうひとつの『虚竜拳』?」
シーフの猛攻をしのぎながら、リトネは問い返す。
『以前、『虚竜拳』は大自然の気と一体になり、空間干渉係数を『気』によって変化させて重さを操る技だと教えたではないか。それは何も軽くするだけとはかぎらぬ。相手を重くすれば……』
「あっ!」
発想の転換を示唆されて、リトネ思わず声をあげる。
しかし、思いついたことをシーフに試そうとしても、あまりにも動きが早いために無理だった。
『師匠!なんとかして、一瞬でもいいからこいつを止めてください』
『仕方ないのう……』
情けない弟子に呆れるマザーだったが、荷物からペットボトルを取り出す。
そのままごそごそと何かをしていた。
「マザー様!なんとかして、リトネ様をお助け……へ?」
振り向いたサブロウは、マザーをみて目が点になる。
「馬鹿者!見るでない!」
次の瞬間、マザーに思いっきりビンタされて、サブロウの首の骨がゴキンという音と共に折れた。
「し、しまった。やりすぎた。こやつはひ弱な人間のままじゃった」
慌てて白目を剥いているサブロウに自らの乳を飲ませ、リンに手伝ってもらって治療する。
「はっ!私は今何を……」
サブロウは死の一歩手前で復活するのだった。
「よいか。お主にも加護を与えてやった。体の奥底から力がみなぎっているはずじゃ」
「……そういえば」
サブロウは自分が今までよりはるかに強くなっていることを実感する。今まで見えなかったシーフの動きを見ることができていた。
「いいか、一瞬でもいいからシーフをとめよ。あとのとどめはリトネがする」
「はいっ!」
サブロウは短剣を構えて、じっとシーフの隙をうかがう。シーフがこちらに背を向けた瞬間、風の魔法を全身にまとって飛び上がっていった。
「勇者リトネ様!助太刀いたす!」
後ろからシーフに飛びつき、のど元を掻き切る。
シーフの動きは一瞬だけ止まった。
「いまだ!『虚竜拳(重)』」
今までとは逆に、シーフの空間干渉係数を+の方向に操作する。
シーフは何トンにもなった自分の体重を風の魔力では支えきれず、すごい勢いで地面に落下してめり込ませた。
「ガッ!」
シーフはそれでも動いていたが、ダメージを負ったため動きが鈍くなる。
「とどめだ!『転送拳』」
リトネはその隙に、闇の魔力を手に纏わせて拳を振りぬく。
シーフの頭はこの世界のどこかに転送されていった。
頭を失ったシーフの体が、力なく崩れ落ちる。
「やった!シーフに勝った」
喜ぶリトネだったが、すぐにその顔が驚きに染まる。
頭のないシーフの体がバネ仕掛けのように立ち上がってきたからである。
「そんな!!」
驚くリトネの前で、ボンッという音を立ててシーフの体が爆発する。
「うわっ!ゲホッ」
爆発したシーフの体から緑色の瘴気が噴出し、リトネとサブロウを吹き飛ばす。
シーフの体は木っ端微塵に砕かれたが、右手だけは元の姿を保っていた。
右手は爆風を利用し、ドラゴンの絵が描かれた扉に張り付く。
「いかん!」
慌てたマザーが動きだすが、右手は最後に残った竜の絵を削り取っていた。
「な。なんということを……」
この場にいるすべての者が立ち尽くす中、巨大な扉がゆっくりと開いていく。
中には、全長数十メートルにもおよぶ巨大なグリーンドラゴンが体を丸めて眠っていた。
ドラゴンの目が、ゆっくりと開いていく。
「グァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
巨大な口からすべてを破壊する衝撃波が発せられ、風の墓場の天井がすべて破壊される。地下何十メートルにも及ぶ深い岩盤が風によってすべて吹き飛ばされ、やけに青い空が見えていた。
新小説投稿サイト「カクヨミ」にて新作を投稿したので、お知らせさせていただきます。
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元ニートは大家を目指す
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154895726
穢れた救世主は復讐する~『最後の審判ゲーム』~
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154878348

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