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新たなる勇者
領都ナスカの城壁の上にいた警備兵たちは、数人の子供が近づいてきたので警告する。
「そこの子供!危ないぞ!今この町はグールの集団に襲われている!近づくな!」
その言葉が聞こえたのか、小柄な少年が手を振ってくる。
「早く逃げろ!え?」
警備兵の目が点になる。少年たちは逃げるどころか、城壁を取り囲んでいるグールの群れに突っ込んでいったからである。
「ば、ばか!なにを?え?」
警備兵の目が今度は驚愕のあまり、目いっぱい見開かれる。少年を取り囲んだ何十ものグールが、まるで人形のように一瞬で宙に放り投げられたからである。
「グヘッ!」
少年は倒れたグールに近づくと、その口もとに変な形の器を向けて吹きかける。すると、緑色だったグールの皮膚がみるみるうちに元に戻っていった。
「こ、これは……すごい!グールの集団を倒している!」
見ていた警備兵の間に感動が広がる。
少年だけではなく、背の高い美少女の拳が一閃すると、数人のグールがまとめて地面に転がる。
黒い服をきた美少女が杖を振ると、グールたちの足元が凍り付く。
赤い頭巾を被った美少女が地面に向けて杖を振ると沼が出現して、グールたちがはまり込む。
彼女たちは少年と同じように動けなくなったグールに何かを吹きかけており、それを吸ったグールたちはどんどん人間に戻っていった。
「もしかして、我らは助かるのか?」
警備兵たちは抱き合って歓喜の声を上げる。
「城内に知らせに行くのだ!」
彼らの兵長の命令により、警備兵たちは城内にこのことを触れ回るのだった、。
ナスカ外。
「燃焼拳!」
トーラがカウンターで拳を放つ。
「ギャッ!」
筋骨たくましいグールがそれを受け、地面に崩れ落ちた。
「トーラ、手加減しろよ。こいつらは元はただの民だから。あんまり怪我をさせるとかわいそうだ」
それを見て、リトネが注意する。
「わかっているよ!ただ、ちょっと手ごわい奴だったからな」
トーラが言うとおり、そのグールは一撃を食らってもまだ立ち上がろうとしてくる。
「いい加減に寝ていろ!」
トーラはブーツで踏みつけて、口元に霧吹きを吹きかける。そのグールはみるみるうちに中年の男に戻っていった。
双眼鏡で見ていたサブロウは驚愕する。
「なっ!フーマの里で私に次ぐ手練れであるコガラシさえも、あっさり倒すとは」
「当然じゃ。ワラワの加護を受けておるからのぅ」
マザーが自慢そうに胸をそらす。
「いったい、彼らは何者なのですか……?」
「えっとね。お兄ちゃんは勇者なんだよ!」
リンは誇らしげに言い放った。
「勇者……ですか?」
「まあ、まだひよっこじゃがのう。我が弟子、リトネは勇者アルテミックの後継者じゃ」
そういわれて、サブロウは少年を見る。彼は一人で何百人ものグールを倒していた。
「新たなる勇者、リトネ様……」
サブロウの頬に感動の涙が伝わっていく。
これが後世で竜勇者リトネにもっとも忠誠を誓ったと言われる、『忍者サブロウ』との出会いだった。
ナスカ城内
「救援が来たぞ!」
「外でグールたちが次々と倒されているぞ!」
警備兵たちが歓喜の声を上げながら、城内を走り回っている。
もちろんその知らせは、会議室にいたゴールドたちにも届いていた。
「救援がきただと?」
「まさか?フーマ殿はついさっき出発されたばかりだというのに!」
知らせを受けた騎士たちは驚いている。
しかし、ゴールドは落ち着いて聞き返した。
「救援に来た者たちの姿は?」
「は、はい。小さな少年が一人に、少女が三人です。彼らは強く、グールたちをなぎ倒しています」
それを聞いて、騎士たちは失望する。
「……なんだ……シャイロック軍ではないのか?」
「グールたちは大群だ。少々腕がたつといえど、少年や少女などすぐに倒されてグールの仲間になってしまうだろう」
彼らは暗い顔をして目を伏せた。
しかし、ゴールドだけはその報告を聞いてニヤリと笑う。
「ふふふ。来てくれたか。彼らなら大丈夫だろう。では、お迎えに行くとしよう」
ゴールドは落ち着き払ってコートを着込む。
「ゴールド様?」
「皆様も一緒にいかかですかな?我らが仕えるべきお方の雄姿を見ることができますぞ」
自信たっぷりに言い放つゴールドに首をかしげながら、騎士たちも後に続くのだった。
城壁の上には、すでに多くの民が集まってリトネたちの戦いを見ていた。
グールが一人倒されるたびに歓声があがる。
「やった!」
「頑張れ!」
民たちは、いきなり現れた救世主たちに熱狂的な声援を送っていた。
そこに、ゴールドと騎士たちが現れる。
「すごい……あんなにたくさんいたグールたちが、ほとんど倒されている」
「しかも、倒されたグールたちは元に戻っているぞ!」
騎士たちもあまりにも圧倒的なリトネたちの強さをみて、感動していた。
その時、騎士の一人がぽつりとつぶやく。
「まるで、伝説の勇者みたいだ」
それを聞いた人々は、誰もが子供の頃に聞いたアンデス領に伝わる勇者アルテミックの伝説を思い出す。
「……ゆうしゃ、さま?」
「勇者様なのか?」
民たちの間にそんなざわめきが広まったとき、ゴールドが声を張り上げた。
「そのとおりだ!彼の名はリトネ・シャイロック様!400年ぶりに現れた、勇者の伝説を継ぐ者。アンデスの民たちよ。もはや心配はいらぬぞ。勇者によって我らは救われたのだ!」
ゴールドの宣言により、民たちの熱狂は最高潮に高まる。
「勇者リトネ様!」
「勇者に栄光あれ!」
リトネを賞賛する声を聞きながら、ゴールドは腹の中でこう考えていた。
(ふふ。これでアンデスの地はわがシャイロック家に完全に従うようになるだろう。この事を叔父上に話せば、私の役目は終わったとして帰してくれないかな?ここは寒くて、持病のリューマチが悪化して……)
そんなことを考えているうちに、最後のグールが倒される。
「よし!城門を開け!」
ゴールドの命令により、城門が開かれるのだった。
活動報告に「反逆の勇者と道具袋」の新刊情報を乗せました

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