職場にイヤな人がいる。

ひきこもり始めて数年経った頃だろうか。なんとなく働いてみたい気がして、とあるバイトの面接を受けてみたことがある。運良く採用されて、働き始めてみたのだけど、どうしても気の合わない人がいた。私のほうは普通に接したつもりなのだが、相手がやけにけんか腰なのだ。掃除の仕方一つとっても難癖をつけてくる。新人に作業を「教える」というのではなく、「責める」というニュアンスで接してくる人だった。

また、挨拶も、私にだけは違った。他の人とはにこやかに挨拶するのに、私との場合は違う。私のほうから挨拶されて、いやいや小声で受け答えるという感じだった(時には完全に挨拶を無視されることもあった)。

「自分にだけ対応が違う」というのは、誰にとってもつらいことだと思う。自分なりに、この職場に定着しようと頑張ってみたが、四六時中、その人のことが頭の中にあり、勤務後も休日もまったく楽しめない。二十四時間、三百六十五日、その人に支配されてしまうのだ。結局、その職場は辞めることになった。

これは、とてもつらい体験だった。「職場にイヤな人がいる」という理由で辞めたことが、自分の打たれ弱さを露呈しているような気がして、つらくなるのだ。

よく考えてみれば分かるが、「イヤな人がいる職場」など、いくらでもある。「イヤな人」が職場に三人や五人いることもザラである。私の場合、その職場にイヤな人は一人しかいなかった。イヤな人が一人だけというのは、職場としては、かなり恵まれたほうだ。そんな職場ですら、勤まらなかった。そのことが、とても情けなくなるのだ。

正直、自分自身に絶望した。

「いつかお前に合った職場が見つかるよ」

そんなセリフで、父は私のことを慰めてくれたが、「イヤな人が一人いるだけで辞めていたら、どこも勤まらないだろうなあ」と、私は心の底で思っていた。イヤな人が一人もいない職場など、考えにくい。イヤな人がいても、耐え抜いて働く図太さが私には必要だったのだ。

イヤな人が一人いただけで、その職場から逃げ出した。

あの職場のことを思い出すだけで、自分が情けなくなる。

4 Responses to “職場にイヤな人がいる。”

  1. anon Says:

    退職や転職の理由としてはそれほど責めるほどのものではないと思います。
    理由の第一位は、大抵、人間関係と言われています。
    もちろん表向きの理由は、スキルアップとか何とか適当にみなさん言いますけどね。

    もっとも生活するだけの金がないからみなイヤな奴がいて転職はしても、引きこもれないわけですが・・・

  2. 二条淳也 Says:

    anonさん

    たしかに、職場を辞める理由としては、「人間関係」が一番多いのかもしれませんね。みんな「家庭の事情で辞めます」とか言ってますが……。

    世の中の人は、イヤな人がいても多かれ少なかれ我慢している訳で、その辺の辛抱強さが足りないと自分的に思います。

  3. 通りすがり Says:

    私も今職場に嫌な奴がいて同じ症状で嫌になります
    私の場合は相手はおっさんで挨拶して目があっても全く無視の糞ッタレです。
    この問題の解決方法はそいつに慣れるか、そいつと仲良くなるか、そいつが辞めるか自分が辞めるかしかないと思います。
    私がやめるのは気に入らないので今度何かイチャモンつけてきたら周りに
    迷惑かけない程度にぶつかってやろうかと思っています。

  4. 二条淳也 Says:

    通りすがりさん

    通りすがりさんも、イヤな人がいてお困りでしたか。「おっさん」になっても、挨拶も満足にしない、そんな人に私も出会ってきましたが、とても幼稚ですよね。

    通りすがりさんの反撃には、とても興味がありますが、大規模な衝突に発展しないことも、願っております。

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