女性のひきこもり。

ひきこもっていると、生活は楽なのだが、精神的にはかなりつらい。二十四時間、生きていること自体に罪悪感を感じるし、扶養者である親に対して、申し訳なさを感じる。

男である以上、「働くのが当たり前」であり、「妻や子供を養うのが当たり前」である。少なくとも、世間はそう見ている。そして、そんな風潮を目にするたびに、こう思うのだ。「女だったら楽なのになあ」と。

一般に、女性は男性に比べて就労に対するプレッシャーが少ない。月収20万円以下の男性はバカにされるが、月収20万円以下の女性は、誰もバカにしない。一日三時間しか働かない男性は軽蔑の対象になるが、女性なら誰も気にも留めない。ごくたまに、

「いつになったら楽をさせてくれるのッ!」

などと旦那に詰め寄る妻がいるが、これは女性の心理を表した好例だろう。多くの女性は、「男は働くのが当たり前、女は楽をするのが当たり前」と考えている。だから、ひきこもっているつらさから、たびたび「女だったら楽なのに」と思ってしまう。

だが、果たしてそうだろうか?

よくよく考えてみると、女のひきこもりも楽ではないことが分かってくる。まず、なにより、同性からの眼差しという厳しい問題がある。若い女性ならまだしも、二十代後半以降になると、女性ひきこもりの立場はかなりつらいものになってくる。同世代の女性はどんどん結婚していく。自分は働きもせず、ひきこもっている。特に、既婚女性は、同年代の独身女性を露骨に見下す傾向がある。女性のなかでは「結婚」が「勝利」に結びつくのだろうか。女性は同性の目をとても気にするから、これはかなりつらい問題だと思う。

さらに、「生き方の多様性」の問題がある。男なら、どんな生き方をしても、そのほとんどが認められる。カバン一つで日本中を放浪してもいいし、地下街に段ボールを敷いて眠ってもいい。海外に打って出てもいいし、反社会的な団体に属して生きていくことも(半ば)認められている。

だが、女性はそうではない。女性の生き方は「主婦」か「キャリアウーマン」ぐらいしか、認められていない。公園で野宿生活したり、狂信的な団体の構成員として生きていると、まず間違いなく白い目で見られる。「風変わりな人生を送れない」といった意味で、女性のほうがつらいのではないか。

男性のひきこもりは、山のようにいる。推計では、百万人をはるかに超えるという。百万人もいれば、社会的非難もそれだけ分散される。正直、私は男なので「俺と同じ境遇の人はいくらでもいる」といった安心感がある。たとえそれがマイナスの仲間であっても、やはり同じ境遇の人が多数いると、安心するものなのだ。

だが、女性のひきこもりはめったにいない。それだけに、社会的非難も集中する。「他の人はみんな結婚しているのに」といった攻撃が、少数の女性ひきこもりに集中する。それは、とてもつらいことなのではないか。

私は男としての人生しか味わったことがないから、女性のつらさに想いを馳せることができない。それでも、女性には女性なりのつらさがあると思うのだ。

男性がいると、女性はなかなか本心を語れないだろうから、女性だけで本心を語れる集まりを設定してあげたいと思う。

女性が安心して本音を語れる場を。

8 Responses to “女性のひきこもり。”

  1. 憂愛 Says:

    ニートの男女比は49対51と統計学的に女性が多い数値も出ているみたいです。・・にも関わらずニートやひきこもりの女性ってネット上やリアル社会でもあまり見ないのはなぜでしょうかね〜?
    社会的にあまり問題視されてないのか、もしくはひきこもりは男性ばかりだから名乗りにくいのか・・のどちらかでしょうか。

    私も同性で自分と似たような仲間がいないのは寂しい、と前から思っていました。
    結婚してない高齢の無職女性が集まる会があったら私も参加してみたいです。

  2. 二条淳也 Says:

    憂愛さん

    へ~、ニートは女性のほうが多いんですか。初めて知りました。ただ、よく考えてみると、そうかもしれませんね。「家事手伝い」という名目で、無職生活を送っている女性は、かなり多いでしょうから。「ひきこもり」は圧倒的に男性が多いでしょうが、「ニート」になると、男女互角ぐらいかもしれませんね。

    無職の男性ばかりが社会的に問題視されているのは、女性に対する社会的要求が低いのと、もう一つは、深刻な男性差別が根っこにあると思います。女性を責めるのは禁じられているが、男性を責めるのは社会的に容認されてますから。テレビなどを観ていても、男性をもの笑いにする番組ばかりですしね。

    同じ境遇の人がいないのは、かなりつらいでしょうね。男性ひきこもりは山のようにいるので、女性ひきこもりのような少数派の方はかなりつらいと思います。

    無職女性の集まる場、設けてみたいです。

    集まってくれるかな。

  3. azur Says:

    無職女性のひきこもり(ってか ひきこもってるんだから無職に成るのかな?)は一見したら判りませんよね
    しかし。。男性に比べたら 各段にラクかもしれません。
    同性(既婚)が同性(未婚)を見る目も 以前はいろいろウザイオバハンがいたけど
     この不況だし
    ふらふらしてても
    「仕事 きまんなくてねー」
    で 済むからね
    やっぱ 女性のひきこもりのほうが 少数派であろうが いいですね~

  4. 二条淳也 Says:

    azurさん

    たしかに、女性のひきこもりって、一見したら判りませんね。男性に比べたら格段にラクだというご意見、やはりですか。結婚に対するプレッシャーは女性のほうが大変でしょうが、就労に対するプレッシャーはやはり男性のほうが強いみたいですね。

  5. はと Says:

    こんにちは。私は女ですが、引きこもっています。
    病気が原因で体力をおとし、療養という名目ですが実質4年。
    上記に書かれていますように、周りは結婚・キャリアを積んでいるというのもとても気になるところです。
    周りばかり見ていてもしょうがないのですが、同族でない者に対する
    女独特の眼の厳しさは辛いものがあります。おしゃべりな分、距離が近いのです。
    男性も仕事の関連から厳しい目で見られるのでしょう、お察しします。
    「結婚してない高齢の無職女性が集まる会」これ、合ったら是非参加したいです。

  6. 二条淳也 Says:

    はとさん

    こんにちは。

    はとさんは女性のひきこもりですか。女性にしか分からないつらさもあるでしょうね。

    「女性のひきこもりが集まる会があったら参加したい」と言ってくれる方はけっこういます。もしそんな会を開催するとしたら、企画段階から男性は一切関わらないほうがいいでしょうね。不純な動機から、この企画に関与したがる男性もいるでしょうから。

    ただ、そんな会を開催する意義はあると思います。

    会を開くために積極的に動けるひきこもり女性がいれば……。

  7. water Says:

    既婚子なし女性のひきこもりが、一番楽。

    女性=結婚のプレッシャー
    男性=結婚のプレッシャー+就労のプレッシャー

  8. 二条淳也 Says:

    waterさん

    なるほど……。

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