「ご両親に挨拶したいの」
デート中、恋人がデパートに行きたいと言い出した。理由を尋ねると、私の両親に挨拶をしたいからであり、その際に持って行く手土産を選びたいのだという。
彼女は、明らかに結婚を念頭に入れている。そして、その準備は着々と進んでいるのであり、着々と私は追い詰められているのだ。
交際をしていながら、結婚をしないのは不誠実だ。そんな声もあると思う。だが、結婚は本当に誠意の表れだろうか。
常識的に考えてみれば分かるのだが、十年以上ひきこもっており、働く意欲もそれほどないというような男が、本当に結婚生活に向いているだろうか。彼女が私のことを好きでいてくれるのは嬉しいのだが、私と暮らせば、間違いなく二人とも不幸になる。
私が彼女と結婚しないのは、不誠実だからではない。逆である。誠実に考えた結果、恋人同士でいることを継続させたほうが、二人にとって幸福だと判断したからである。
私の職場に、しきりに結婚を勧めるおばさんがいる(私は少しだけ働いている)。このおばさんは、私が「一生独身でいたい」と言うと、猛烈に怒りだし、「そこに座りなさい!」と叫んだあと、長時間結婚を勧めるという暴挙に出た人なのだが、実はこの人本人は、結婚生活に幸福を見出していないのだった。夫にも結婚そのものにも不満を持っており、独身に戻りたいという願望を持っているのだった。
このような人は、非常に多い。自分は結婚生活に幸福を感じていないのに、独身を見ると、つい結婚を勧めてしまう。これは、ある種の病気なのではないかとすら思える。結婚しようが独身でいようが、本来はその人の勝手であり、本人の自由意思に任せるべきなのだが、女性(特におばさん)は、結婚をしきりに進めたがる。結婚を勧めなければならない内面の鬱屈が彼女たちのなかにあるのだろう。悲しいことだと思う。
私は中年のひきこもりである。両親は年老いている。今までさんざん迷惑をかけたので、――母はともかく――全力で愛してくれた父に、少しでも親孝行したいと思う。
だが、私のなかでは、結婚と親孝行が結びつかない。
私は、一人でいるときが一番幸せだと思うタイプの人間である。正直、デートが終わって一人きりになると、とてもホッとする。このようなタイプの男が結婚すれば、多くの人を不幸にすることになる。もしかしたら、実の父でさえ、不幸に巻き込んでしまうかもしれない。
「ひきこもりだけど、彼女が欲しい」と思っている男性は、非常に多い。だが、余裕があれば、その先のことも考えてみて欲しい。
ひきこもっている自分が、他人と一緒に暮らすことに耐えられるだろうか、と。
12月 14th, 2011 at 11:57 AM
あれ?二条さん少し働いてたんですか?
私もですが、少しでも外で働いてるなら「ひきこもり」というのは違うのか、それでもやっぱり殆どは家の中で過ごしてるから「ひきこもり」なのか?という定義は難しいですね・・。
結婚しないことの誠実さ、分かる気がします。
私も一人でいるのが一番落ち着きます。私みたいなダメ人間と関わると人は気を使う、そして不幸になる・・と心のどこかで思っています。だから結婚どころか友人も作らず、孤独を自ら選んでいるのかもしれません。
12月 14th, 2011 at 10:04 PM
憂愛さん
ほんのすこ~しだけ、働いています。でも、今日も昨日も何もしないで、家にいました。「少しだけ働いている人」が「ひきこもり」のなかに入るのかどうか、たしかに微妙なところですよね。純粋な無職しか「ひきこもり」として認めない人もいますし。
孤独を自ら選ぶというのは、とても共感できます。私は、「自分と一緒にいてもつまらないだろうな」とか思ってしまうので、一人でいようとしちゃいますね。