これからどうするの?
学校を出てから、フリーターだったり派遣だったりひきこもりだったりしてきた訳だけど、そんな生活をしていると、多くの人から同じことを訊かれる。
「二条さん、これからどうするの?」
この質問をしてくる人は非常に多い。特に、正社員の人はこのような質問を好んでしてくる。彼らは、私の行く末が心配でこの質問をしてくる訳ではない。これからどうするのか私の進路を疑問に思ってしてくる訳ではない。明らかに、「優位性の確認」がしたいために、この質問をしてくるのだ。
正社員や学生にとって、中年のひきこもりというのは、とても優越感を感じさせる存在らしい。中年のひきこもりである私を見ると、「こいつに比べれば自分はまだマシだ」という心理が働いて、あたかも自分が優位に立ったような気持ちになれる。「これからどうするの?」という質問をすることによって、彼らは「自分より下がいる」ことを確認しているのだろう。
地下街に住んでいるホームレスは、たまに火の付いたタバコを投げられたり、罵声を浴びせられたりするという。そのようなことをする人は、サラリーマンが多いという。サラリーマンたちは、ホームレスを見ると、「俺より下がいる」と確認できるのではないか。そして、そんな優越感の表れが、ホームレスに対する攻撃として表れるのではないか。
断言してもいいが、サラリーマンは安定してもいないし立派でもない。いつリストラに遭うか分からないし、初任給に毛が生えたような賃金で長時間労働に耐えている。そんな生活をしていると、自分より下がいることを確認したくてたまらなくなるのかもしれない。
どんな人だって、自分が最底辺であったら耐えられない。自分より格下がいれば、自分を慰められるし、つかの間の優越感を味わえる。ひきこもりに向かって「これからどうするの?」と訊く人も、この質問をすることによって、「俺はまだマシだなあ」と確認しているのではないか。
「これからどうするの?」と訊かれるたびに、言いようのない不快感を覚える。そして、同じセリフを、私よりさらに下の人間に言ってみたい気がする。私だって誰かを見下して優越感を味わいたい衝動に駆られる時がある。だが、中年ひきこもりより下を見つけることはとても難しいし、「自分より下を見つけて優越感に浸る」という行為だけはしたくないというプライドがある。
ひきこもりたちは、周囲に優越感を与えるために生きているのだろうか。