「一度ぐらい結婚すれば?」

「恋人がいる」と言うと、多くの人が、

「一度ぐらい結婚すれば?」

と言う。この言葉、私が大嫌いな言葉だ。

「一度ぐらい」という言葉には、「イヤになれば別れればいいのだから」という言葉が内包されている。その姿勢が、私には強い嫌悪感を感じさせる。「一回ぐらい結婚すればいい、イヤになれば別れればいいのだから」という、結婚に対する軽々しい姿勢が、とてもイヤなのだ。

「好きになれば結婚して、イヤになれば別れる」という短絡的な考えが、私にはまったく納得できない。「無理して結婚生活を継続させる必要はない」と多くの人は言うかもしれないが、「イヤになれば別れればいい」のなら、最初から結婚しなければいいのだ。恋人同士のまま、その関係を維持し続ければいいだけの話だ。

現代において、「結婚」の意味はとても軽々しく、陳腐なものになっている。不倫や離婚が横行し、時代と共に結婚の意味は薄っぺらいものになっている。本来、「結婚」とは「これから先はこの人だけです」という永遠の誓いの筈である。ところが、そんなカップルはほとんどいない。イヤなことがあれば、すぐに別れる。なかには、最初から離婚を想定していながら結婚する人(大抵女だ)もいる。

そんな軽い気持ちで行うのなら、そもそも「結婚」という制度自体が無意味である。

だが、多くの女は、それでも結婚したがる。女は「男から愛された証」を欲しがるからである。私は長いあいだ、夜の世界で働いてきたが、クラブのママなどで、同じ「五十歳・独身」の女でも、「結婚歴がある女」と「ない女」では、そのステイタスが全く違う。「結婚歴のある女」のほうが、格段に立場は上なのだ。「男に愛されたことがある、女としての喜びを知っている」という意味で、結婚歴のある女のほうが高いランクに位置づけられるのだ。夜の女の世界では、そうだ。

女が結婚したがるのは、その男と一生一緒にいたいからではない。苦楽を共にし、永遠の愛を誓い合いたいからではない。「男に愛された」という「証」が欲しいからであり、「既婚者」というステイタスが欲しいからである。

「一度ぐらい結婚すれば?」と言うのは、大抵、女である。男はまず、このような言い方はしない。一度は結婚しないと、女としての存在意義が揺らぐのだろう。悲しい性である。

「一度ぐらい結婚すれば?」

と言われたら、その女にこう言い返してみたい。

「あなたは一度結婚をしないとアイデンティティーが保てないのですか?」

4 Responses to “「一度ぐらい結婚すれば?」”

  1. 憂愛 Says:

    確かに結婚に限らず、恋愛や男女関係全てが最近軽々しくなっているような気がします。
    ネットや出会い系などが浸透して、初めから別れを前提しているような「身体だけのカジュアルな関係」「セカンドラバー」を求め、嫌になったら切る・・というような。

    それでも、そういう関係に甘んじてしまうのは「一瞬でも愛された証が欲しい」という女性の悲しい性でしょう(私も女性なので少なからず理解出来ます)
    私は「愛された証」は恋愛だけで十分だと思います。
    でも、この先一人で生きられるだけの精神力と経済力がないから「結婚」して男性に頼りたい・・というのが本音です(実はこのことで先週彼とイザコザがあり、お互いの仕事こと含め絶望だらけで涙が止まらず久々に本気で自殺を考えてしまいました・・)

    このままいけば私もオールドミスの道を辿ることでしょう・・。悲しいけれど、それも人生の一つだと受け入れてアイデンティティーを保ちたいです・・が、どうしたら良いのか分かりません。

  2. けびん Says:

    「私は長いあいだ、夜の世界で働いてきたが」

    えwそうだったんですか?
    ホストかボーイですか?

  3. 二条淳也 Says:

    けびんさん 

    なはは、まあ、そんなところです。アルコールを出すお店です。

  4. 二条淳也 Says:

    憂愛さん

    「身体だけのカジュアルな関係」というのは、私なんかにはホント、理解できませんね。「肉体を求めること」と「愛」とは全く別であり、「性欲の処理」は愛でもなんでもないのですが、そのへんをはき違えている人、すごく多いようですね。

    「この先、一人で生きていける経済力がない」というのは、私も同じです。憂愛さんが彼氏さんに依存してしまうように、私も父親に永久に頼ろうとしている。大の男が、本当に情けないと思います。

    私も「死」を強く願う時が頻繁にありますが、実際に自殺を検討すると、これはなかなか難しいというのが本音です。

    憂愛さん。もうしばらく、お互い生きてみませんか?

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