男のいじめ。

いじめによって自殺するのは、大半が男子である。それを見て、「男は弱い」と決めつける人がいるが、そうではない。自殺するのが男性ばかりなのは、「弱い」からではなく、「男性のいじめのほうが苛烈だから」である。

女性の多くは、男性にある種のロマンチシズムを持っている。だから、「女のいじめは陰湿だけど、男のいじめはカラっとしている」などと言ってしまう。だが、これは完全に間違いである。女性のいじめ以上に、男性のいじめは陰湿なのだ。

高校三年といえばかなり大人だけど、私の高校では陰湿ないじめが繰り返されていた。いじめられっ子のポータブルCDプレーヤーを盗んだり、現金を脅し取ったりしていた。私の上履きに画鋲が置かれていたこともある。十八歳の男が、こんな幼稚なことをするのだ。

また、私がバイトしたお寿司屋さんでは、二十九歳の職人さんがいじめられていた。二十四歳の職人に胸ぐらを捕まれたり、ロッカーに入れておいた給料袋を盗られたりしていた。給料を盗むなど、もう「いじめ」を通り越して「犯罪」である。

分かるだろうか。男性のいじめは自尊心を徹底的に解体し、死にまで追い込むレベルのものである。昔のいじめは「可愛いから、つい、いじめてしまう」というレベルだったが、今は違う。「自殺するまで徹底的に追い詰める」というレベルである。少なくとも、私が見てきた例では、「傷害・窃盗」の犯罪レベルが多かった。

そんなことが続けば、誰だって外に出るのが怖くなる。親たちは自分の頃の感覚で、

「いじめなんて、どこにでもある!」

と言ってしまうが、今はそんなレベルではないのだ。

お父さんお母さんたちも、我が子を死なせるぐらいなら、ひきこもってでも生かしてあげて欲しい。

(ひきコミ94号掲載文)

6 Responses to “男のいじめ。”

  1. 憂愛 Says:

    確かに18歳でこの苛めは幼稚過ぎてびっくりです!私も、教科書盗まれたり、お金や文房具をせびられたり(数百円程度の損害ですが)、靴を隠されてガビョウ入れられる苛めの経験がありますが全て小学生の時でした。

    高校時代は、何となく避けられたりヒソヒソ悪口や陰口を言われたりする程度だったのが不幸中の幸いでした(まあ、どちらにしろ苛めには変わりありませんが・・)
    我ながらそんな状態で良く不登校にならなかったな・・と。本当は学校休みたかったけど親が許してくれなくて、どこにも居場所がありませんでしたね・・。

  2. 二条淳也 Says:

    憂愛さん

    すごく幼稚でしょう。大の男でも、こんな幼稚ないじめをするんですよ。

    憂愛さんも、学生時代はかなり苦労されたようですね。私も、母が不登校を許してくれなかったので、我慢して学校に行き続けるしかありませんでした。

    陰口や避けられたりするだけでも、繊細な子にはきつかったのではないでしょうか……?

  3. 西貢 Says:

    いじめに限らず悩んで自殺するのは男性の方が多いですよ。
    自殺未遂が多いのは女性で、自殺完遂が多いのは男性です。

    というのも、女性の自殺未遂は、初めから未遂のつもりでやるものが多いからです。
    わざと手首の見えやすいところにリストカットの痕を残したりするのは、誰か自分の苦しみに気づいてほしいという「SOS」のサインだったりするんです。
    だから本当に自分を殺してしまう前に他の誰かの助けを得やすくなります。
    それに比べて男性は、その「SOS」を出さずに突然自殺することが多いんです。
    だから誰からの助けも得られないまま、死に至ることが多いのです。

    男性のいじめと女性のいじめのどちらが苛烈かは私にはわかりませんが、「男性のいじめは陰湿でない」という(主に女性からの)思い込みは嘘ですね。
    陰湿でないいじめなどありません。
    これは私自身体験者ですからわかります。

  4. 二条淳也 Says:

    西貢さん

    おっしゃる通り、自殺するのは圧倒的に男性のほうが多いですね。私も手首を切ってSOSを出したい気持ちになることがありますが、これみよがしに自傷行為をして、他者の注意を惹こうとすることが、なんだか「男らしくない行為」のように思えて、それができません。

    男性の場合、「男らしくあらねば」というプレッシャーが常にあるので、SOSを求めにくいのかもしれませんね。

    「男性のいじめは陰湿ではない」という女性の思い込み、私も本当に嘘だと思います。女性からも理解されないからこそ、男性たちは追い詰められていくのかもしれませんね。

  5. みらい Says:

    女ですが記事には同感です
    というかドラマにしろ本にしろ
    女性の確執ばかりが面白おかしく描かれていますよね
    女の場合は陰湿ではあるけれど
    どこかで一線は越えない感じがあります

    「男性のいじめは自尊心を徹底的に解体し、死にまで追い込むレベルのものである」
    この言葉はすとんと胸に落ちてきました
    でもいじめを行う人が誰に対しても非道で腐ってるというわけではなく
    多面的な顔をもっていて、家族や友人に対しては優しかったりするのが不思議です
    しかもけしていじめは珍しくはないんですよね…
    集団の中ではもはや仕方のないことなのでしょうか
    一度受けた精神的な傷はいつまでも傷であり続けると思います
    いつかいじめなんてなくなって欲しいですが
    無理なんでしょうね…

    せめてテレビなど子供の目につきやすい場所で
    いじめの方法を示唆する内容のものがなくなればと思います
    エスカレートしていくのが人間の性ですが
    しらなければおこりえなかった内容のいじめもあったのではと思います
    思いつく人は思いつくのでしょうけど

  6. 二条淳也 Says:

    みらいさん

    同館して頂けましたか。ありがとうございます。

    女性のいじめもかなり陰湿らしいですが、男のいじめのように、殴る蹴るの暴行は、やはり少ないようですね。「一線を越えない感じ」というのは、含蓄のある言葉ですね。

    たしかに、いじめをする人が、ある特定の相手にはとても優しいことがあります。誰にでもいじめを行うのではなく、ごく限られた人間を選び出し、攻撃を加えています。「優しい面もあるから」といって済まされない問題ですよね。みらいさんのおっしゃる通り、いじめで受けた傷はなかなか癒えないので、いじめ撲滅のために、もっと知恵を出し合うべきでしょう。

    メディアがいじめにある程度荷担しているのは、事実だと思います。マンガを読んだ少年が、そのマンガに書いてある通りの犯罪をしでかすこともありますし。

    いじめを受けた人が、その犯罪性をもっと告発するべきかもしれませんね。

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