私が出会った職場③

どんな仕事に就いても、なかなか仕事が覚えられない。他の人が一ヶ月で習得することを、私は三ヶ月かかっても習得できない。また、説明を一回聞いただけでは、その意味が理解できない。時には五回も十回も聞いて、相手を苛立たせることもある。

たまに、一を聞いて十を理解してしまうような人に会うが、そんな人が私には信じられない。私は十を聞いても三ぐらいしか理解できないため、「飲み込みの早い人」が、驚嘆に値するように感じられる。

私の勘では「飲み込みが早いか遅いか」は、かなり先天的なものだと思う。「すぐに理解してしまう人」と「なかなか理解できない人」というのは、生まれ持った性質の差だと思うのだ。

「自分のペースで仕事を覚えればいいじゃないか」

そう言ってくれる人もなかにはいるが、実際の社会ではそうはいかない。同じ質問を二度も三度もすると、大抵の人は怒り出すのだ。

さらに残酷なのは、「覚えが悪い人」というのは、職場いじめのターゲットになりやすいということだ。職場では能力差によって、評価がハッキリ分かれる。そして、低い評価を与えられた者は、かなり差別的な扱いを受けることになる。

以前、ある職場で、私はなかなか仕事を覚えられなかった。説明を三回聞いても四回聞いても分からない私に対して、主任はついに声を荒げた。

「こいつ、使えねーよッ!」

職場中に響き渡る声で主任が怒鳴ると、職場中の人が一斉に笑った。思い出すだけで手に汗がじっとり浮かぶほど、つらい経験だ。

飲み込みが遅い。覚えが悪い。マイペースでやっていると、罵倒される。そんな人は、社会でどうやって生きていけば良いのだろう。覚えが悪くて、周囲から軽蔑されながらも、毎日働いている人を見ると、それだけで感心してしまう。

(ひきコミ93号掲載文)

2 Responses to “私が出会った職場③”

  1. バラ Says:

    頻繁にコメントしてごめんなさい。

    私が出会った職場?〜質問するのが怖い。までの内容が、まさに今私の身に起きている事なので……。

    私も仕事覚え悪いです。が、説明する側にも問題あると思います。

    こっちは何もわからない状態なのに、さも分かっていて当然といった態度で大ざっぱな説明だし、何より下手。

    自分の説明が悪かったのかな…?と言った疑問は浮かばない様ですね。

    それに会社のルールというよりは、自分ルールで仕事しているので、些細な事も指摘されます。

    例えば、レ点を付ける場所を指定する。正直、分かればどこだっていいと思うんだけどこだわるんです。

    やってる事ほとんど いじめです。

    よかれと思ってやった事が全て裏目に出ています。と言うか何をやっても納得しないので、私が気にいらないのでしょう。

    相性が最悪です。

    どうしたら人に好かれるんだろう……、どうしたら人に傷つけられずに済むんだろう……。

    考える日々です。

  2. 二条淳也 Says:

    バラさん

    いつもブログを見て頂いて、本当にありがとうございます。

    バラさんも覚えが悪いほうですか。意外ですね。文章を見た感じでは、覚えが良さそうに感じました。

    相手が何も分からないのに、自分が分かっているから、「なんでこんなこと分からないんだ!」と怒る人がいますけど、本当に腹が立ちますね。教える側を基準にしていたら、部下を育成することなどできないのに、説明する側は、そこまで頭が回らないようですね。ある意味、悲しい人であり「足りない人」なのかもしれません。

    「説明にかこつけたいじめ」は、かなり多くの職場で蔓延してそうですね。入社してすぐに辞めてしまう人がけっこういますけど、「教える際のいじめ」に嫌気が差して辞める人も多いと思います。

    「どうしたら人に好かれるんだろう」という言葉、本当に重く響きました。私もずっとそれに悩んでいます。

    同じことに悩んでいる人がここにもいることを知って貰えれば、少しはバラさんの悩みも軽減するでしょうか……。

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