周囲を意識したひとりごと。
「あーっ、暑い! ジュースでも買いに行こうかなあ?」
大きな声で、そうひとりごとを言う人が職場にいる。その場には、数人がいる。その人の発した声は「ひとりごと」ではなく、厳密に言えば「周囲を意識した問いかけ」である。
大声でひとりごとを発したAさんは、「ジュース買いに行こうかな」と大声で言うことによって、「俺も行くよ」とか「本当に暑いですね」といった反応を期待しているのだ。
私には、この「周囲を意識したひとりごと」に対応する方法が分からない。
以前の職場で、同僚の男性が、
「彼女が欲しいなあ!」
と大声で言ったことがある。彼女がいなかった私は、
「あ、俺も欲しい」
と言った。すると、その人は、
「お前には訊いてねえよ!」
と答えた。
次の時、
「将来、結婚したいなあ!」
とその人が問いかけたので、自分には関係ないだろうと思い、黙っていると、
「無視すんのかよ!」
と、怒鳴られた。
このように、大声でひとりごとを発して、周囲の反応を窺う人というのは、かなり多い。断言しておくが、これは極めて卑怯なコミュニケーション方法だと思う。何らかの問いかけをするのなら、「彼女いるの?」とか「結婚したい?」とか、直接訊けば済むことだ。そうはせず、ひとりごと形式にして、反応を勝手に期待するというのは、極めて卑劣と言わざるを得ない。
女性でもこのような人は多い。
「あー、誰か飲みに付き合ってくれないかなあ?」
と大声で言いながら、私のことをチラチラ見ている女性がいる。
「僕で良ければ付き合いましょうか?」
と言うと、
「別に、あんたに言ってないから」
と言う。で、無視していると、
「なんで、何も言ってくれないの?」
などと怒り出す。一体どうすればいいのだ。
きっと、このように「周囲を意識したひとりごと」を発する人は、「無視されることに強い恐怖」があるのだろう。ひとりごとなら、無視されてもダメージは少ない(なにしろ、ひとりごとなのだ)。
また、私に対する攻撃心もあったと思う。このような「周囲を意識したひとりごと」を発すれば、どんな反応をしても攻撃できる。答えたら答えたで「訊いてねえよ」と怒れるし、無視したら無視したで「なんで無視すんだよ」と怒れる。このような方法で気に入らない人を攻撃しようとする人は、世の中にとても多い。
社会で働く以上、このようなタイプとの接触は避けられない訳であり、どうしても、このような人との「上手い共存方法」を学ぶ必要がある。だが、私は中年になっても、この「周囲を意識したひとりごと」に上手く対応できない。
その職場から去るぐらいしか、対処方法はないのだろうか。