質問するのが怖い。
職場で分からないことがあった時、普通の人なら質問するのだろうが、私にはそれができない。質問すると怒り出す人がいるからだ。
これまでの職業経験で、質問して良かったためしがあまりない。まず、質問するタイミングが分からないのだ。「分からないことがあったら訊いてね」などと先輩は言ってくれるのだが、いざ質問しようとすると、なかなかそのタイミングが掴めないのだ。特に、忙しそうな人に質問することに、とても抵抗がある。
あの人、今、忙しそうだな。
今、質問したら怒られそうだな。
今、質問したら迷惑に思われるだろうな。
そんなことばかりを考えてしまい、結局、自己判断でものごとを進める。そして失敗し、叱られる。そのパターンが多かった。
「分からなかったら訊けよ!」
そう言われるのだが、では実際にその人に訊くと、かなり面倒くさそうに答えたりするのだ。一回訊いてもかなりイヤそうなのだ。二回、三回など、とても訊けたものではない。
また、人によって、言うことが違うことがある。Aさんは「分からなかったら訊け」と言い、Bさんは「訊く前に自分で調べろ」と言う。そうなると、私にはどうしたらいいか、分からない。仕方なく自分で調べていると、
「何やってんだ! 分からなかったら訊けって言っただろう!」
と怒鳴られる。恐る恐る訊いてみると、
「まず自分で調べろよ!」
と叱られる。一体、どうしたらいいというのだ。
この不条理な問題に、多くの社会人がどう対処しているのか、不思議でならない。恐らく、大多数の社会人たちは、「適当に」こなしているのであり、叱られても「あまり気にしない」のだろう。「適当」も「気にしない」のも、私にはとても不可能なことだ。私は何かを適当にこなすことができず、また、ものごとを全てまともに受け止めてしまうのだ。
どんな仕事をするにしても、「質問をする」ことは避けられない。だが、質問すると、怒り出す人が必ずいる。私は飲み込みが悪く、一回で理解できないから、二度三度、同じ質問をすることになり、それがよけい、質問される側の怒りを買う。
「あの……これは、どうしたらいいんでしょうか?」
そんな「質問のシーン」を想像するだけで、緊張してくる。
人間の社会で暮らすこと自体に向いていないのだろうか。