親の性格。

私の一番の理解者は父である。父は私を否定することが、まずない。そんな父が、よく口にするセリフがある。

「まあ、なんとかなるだろ」

父の口からこの言葉を聞くと、心底ホッとする。大げさな表現だが、あらゆる問題が解決されたかのような、とても穏やかな気持ちになれるのだ。

私は中年のひきこもりである。無職歴はとても長く、実家の父が送ってくれる仕送りで、ほぼ生活を支えている。父はもう老齢であり、さらに心臓に病気を抱えている。発作を起こし、何度も倒れ、そのたびに救急車で運ばれている。さらに、両親には年金がなく、父が働けなくなったら、その時点で親も私もおしまいである。

息子は中年のひきこもり。頼りの父親は高齢で重い病気を持っている。年金はない。誰から見ても深刻な状況である。父にとっても、私にとっても、生活状況はまさに「絶対絶命」である。ところが、父はまず深刻にならない。どんな深刻な事態に直面しても、ものごとを全て笑い飛ばしてしまう。そして、軽い口調でこう言うのだ。

「まあ、なんとかなるだろ」

そう言われると、言われた側も本当になんとかなるような気がするから不思議なものだ。ひきこもり当事者として言わせてもらえば、親が楽観的だと本当に助かる。「このままだと大変なことになるぞ」などと思い詰めた表情で言われたら、息子のほうも、その深刻さに縮み上がってしまうが、「なんとかなるだろ」と言われると、

「たしかに、そうだね」

と言われたほうも楽観的になって、前向きな気分になってくる。楽観的な人というのは、周囲も明るくしてくれるので、暗くなりがちなひきこもりにとっては、本当にありがたいのだ。

世の中には色々な人がいる。なかには両親が揃って悲観的なため、追い詰められているひきこもりもいるだろう。

ひきこもりの子を持つ親御さんに言いたい。なんとか頑張って、楽観的な視点を身に着けて下さい、と。

親が楽観的だと、子供はとても助かるのです。自分の悩みが、取るに足らない、ささいなものであることが証明されたような気がして。

(ひきコミ92号掲載文)

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