荒れる天気。
どうも明日は、全国的に天気が荒れるらしい。ニュースでやってた。北海道から西日本まで雪が降るそうな。
ということは、私の住んでいる所も雪が降る訳である。雪の日なんか、絶対に家にいたい。曇りの日でも家にいたいのに。
だが、夜、恋人の律子から電話があった。どうしても明日逢いたいらしい。明日を逃すとバレンタインを味わえないからというのが、その理由らしい。
男冥利につきるといえばそうなのだが、はっきりいってあまり嬉しくない。私は天気の悪い日には、家にいたいのだ。たとえそれが愛する恋人であっても、誘いを断りたい。およそ男性とは思えないような考えである。
どうも律子は、明日は私とどこかに泊まりたいようだ。律子は私としきりに宿泊したがる。こんなお誘いを受けられるひきこもり男性はとても少ないだろうから、本来は喜ぶべきなのだろうが、私は「誰かと同じ部屋に寝る」ということに耐えられない。
おならを聞かれたら恥ずかしいし、寝起きの爆発した髪型を見られるのも恥ずかしい。寝ながら深夜ラジオも流したいし、気が向いたら深夜でもコーヒーを淹れたい。つまり、誰かを配慮することができないのであり、誰かと夜を共にすることができないのだ。
極度の恥ずかしがり屋だと、社会生活をすることが困難になる。傷ついてばかりでは生きていけないからだ。だから、世の中の多くの人は、ちょっとやそっとでは傷つかないようになっている。だが、そんな感情の鈍磨を、私は身に着けていない。本来は年を取れば自然に身に着けるべきものを、私は中年になっても獲得していない。
恋人が一緒に泊まりたいと言ってくれているのだ。独身男性なら喜ぶのが普通だろう。だが、私には、そんな「普通」すら身についていない。
働くことに向いていないというより、もはや「男であることに向いていない」のである。
我ながら、これではちょっとまずいな、と思う。なんとかして、現状に満足できるようになりたい。
多くのひきこもり男性が欲しくても持てないものを、私は持っているのだから。