自分の時間が一番大事。
「ガイアの夜明け」という番組がある。私の大好きな番組だ。それを観ている最中に、電話が鳴った。父からだった。
「淳也、元気か? お前の声が聞きたくて」
私は無性に腹が立った。大好きなテレビ番組を観ている最中に、電話をかけてきた。楽しみを中断されたということに、とても腹が立ったのだ。
冷静に考えれば、年老いた父と話せる期間はそう長くなく、今のうちに会話を楽しんでおくべきなのだが、楽しみを中断されると、それどころではなくなる。なんだよ、もう! という怒りばかりがつのるのだ。
多くの人がそうなのか、私だけなのか分からないけれど、とても狭量な感じがする。社会性の低さを自分でも感じるのだ。
以前、ある会社で働いていたとき、私はいつも社員食堂で休憩していた。自販機もあって空調も効いていたので、読書に最適だったのだ。私は休憩時間、ずっと読書をしていた。
そんなある日、気さくな同僚(誰からも好かれる人だ)が、隣に座ってきて話しかけてきた。私はその人を押しのけたい気持ちでいっぱいだった。
大好きな読書の時間を妨害されたことが、ひどく気に障ったのだ。口には出さなかったけれど、とてもぶっきらぼうな口調になっていたと思う。
我ながら、これではどうしようもないなと思う。
自分の時間を大切にすることは、大事である。だが、その楽しみを「最優先」にしていたら、社会ではうまくやっていけなくなる。楽しみを一時中断することも大事であり、そうしなければ円滑な人間関係ははぐくめないからだ。
今からでも父に電話して、
「父さん、さっきはぶっきらぼうでごめん。電話してくれて、ありがとう」
と言いたい。
父と話せる時間も、もう残り少ないのだから。