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大震法見直し 廃止も選択肢のひとつ

 東海地震に備えた大規模地震対策特別措置法(大震法)が見直される見通しになった。内閣府の中央防災会議に有識者会議を設置し、今年度中に提言をまとめるという。

     大震法は、1978年に施行された法律で、東海地震の直前予知を前提に作られた。だが、大地震の予知が困難だというのは、いまや研究者の共通認識だ。現実とかけ離れている上、複数の震源域が連動しての地震も想定される中、東海地震だけを対象にする意味も薄い。見直しは遅きに失したが当然といえる。

     気になるのは、大震法の対象地域を南海トラフの巨大地震の震源域全体に拡大することで、議論を終わらせる可能性があることだ。

     南海トラフの巨大地震は、東海沖から九州沖の太平洋海底に延びる溝状の地形(トラフ)に沿って起きる可能性があり、東海、東南海、南海の三つのエリアを震源域とする。極めて広い範囲だ。

     現行の大震法では、予知に基づいて地震が迫っていると判断した場合、首相が警戒宣言を出す。鉄道の運行や銀行の一部業務の停止など強い規制を伴う措置が可能になる。

     大震法の網を広げるに当たっては、こうした市民生活を強く縛る規制を緩和する方向という。

     だが、最も肝心なのは、地震の前兆現象を検知して警戒宣言を出すという大震法の仕組みが、防災上、機能するかどうかということだろう。

     地震については、予知のみならず、30年以内の地震発生確率を示した長期予測も当てにはならないことが、東日本大震災などの経験で明らかになった。

     地震学の限界を見据え、予知ではなく減災に重きを置いた防災対策が現実的だ。

     南海トラフの巨大地震については2013年に特別措置法が施行された。29都府県の707市町村を防災対策の推進地域に指定し、防災計画づくりや、津波からの避難路整備など減災対策を国の財政支援の下で進めている。予知や発生予測は前提としていない。

     大震法を温存した場合、特措法とどう整合性をとるのか。その点についても検討が必要だ。

     有識者会議の議論では、地震の「兆し」など不確実であいまいな情報を社会でどう生かすのか議論される予定という。

     だが、中途半端な情報発信は混乱をきたすだろう。現実的な対策に結びつくのかやはり疑問が残る。予知への幻想を残すような議論になってはいけない。

     結局は、大震法が必要なのかという出発点に戻る。専門家による検討に当たっては、廃止を含めてゼロから議論を尽くしてもらいたい。

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