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米軍属の「限定」 再発防止には不十分だ

 再発防止の効果があるのか極めて疑問だ。

     沖縄県での米軍属による女性暴行殺害事件を受けて、日米両政府は、日米地位協定で保護される軍属の範囲を限定することで合意した。

     在日米軍基地で働く民間の米国人である軍属は、日米地位協定上、軍人とともに特権的な地位が与えられている。ところが、地位協定が定める軍属の範囲は「日本国にある米軍に雇用され、これに勤務し、随伴するもの」とあいまいだ。

     合意では、軍属の範囲について「米国政府予算などにより雇用される者」「船舶等の乗組員」「米国政府が雇用する者」「技術アドバイザーやコンサルタント」の4類型を例示した。だが、4類型はあくまで例示と位置づけられており、他のケースも含まれる余地が残る。範囲は依然としてあいまいだ。

     米軍属は、今年3月末現在で全国に約7000人いる。このうち請負業者などが軍属から除外される主な対象になりそうだ。

     沖縄には、2013年3月末現在で米軍人は2万7791人、米軍属は1885人いる。

     範囲を限定した結果、軍属の人数は減ることが期待されている。だが、米軍が請負業者などの数そのものを新基準内で増やす可能性もあり、減るかどうかは見通せない。

     このほか合意では、日本に在留資格を持つ者を軍属から除外する仕組みを強化することや、軍属の適格性を定期的に見直すこと、教育・研修の強化が盛り込まれた。いずれも、もっと早く実施しておくべきだった当然のことばかりだ。

     そもそも、沖縄県が再発防止策として求めてきた「地位協定の抜本的改定」「米軍基地の大幅な整理・縮小」などの内容からはほど遠い。

     地位協定では、軍人・軍属の公務中の犯罪は、米側に優先的な裁判権があり、公務外でも米側が先に容疑者の身柄を確保すれば、原則として日本側が起訴するまで米側が拘束できる。殺人などの凶悪犯罪の場合は、日本側からの起訴前の身柄引き渡し要求に対し、米側が「好意的考慮を払う」と運用改善されたが、強制力はない。

     起訴前の身柄引き渡しを運用改善ではなく明文化して強制力を持たせれば、犯罪の抑止効果が高まると、県側は主張している。

     軍人・軍属への教育も、適切な内容で徹底すべきだ。沖縄の人々にとって、米軍が「良き隣人」となるための教育をしてもらいたい。

     容疑者の逮捕から1カ月半。この間、米軍人・軍属による事件・事故の再発防止が叫ばれながら、飲酒運転の事故などが相次いでいる。小手先の対策ではすまされない。

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