今、日本の政治は一部の特権階級の独占物になっている。新規参入を促すために、有権者が政治に対する概念を根本的に変えるべきです。
多くの人は「政治は国会議員がやるもの」と思っている。確かに間違いではありませんが、それは表面の一部にすぎません。この世に存在するものは、すべて政治的な要因が絡んだ上で形づくられている。だから政治が変わるだけで生活もゴロッと変わります。
民主主義の基本は主権在民。つまり、僕たちが国の最高法規、最高権力者なんです。僕たちは忙しいから、政治家に「やっておいてね」とお願いしているだけ。有権者はもっと高飛車になっていいんです。そもそも議員を「先生」と呼ぶのがよくない。議員でいい。彼らは小間使いで、偉くもなんともないんですから。
学校でも、クラス委員になるのは目立ちたがり屋で自己顕示欲が強くて先生のウケがいい人間でした。「あいつにやらしとけよ」っていうものだったでしょ? その延長だと思えばいいんですよ。
アメリカ大統領選では、民主党の予備選挙でバーニー・サンダースが大善戦した。彼はアメリカの国是とは逆のことを言う民主社会主義者で、最初はまったくの泡沫候補でした。それが台風の目になったのは、若い世代が支持し、応援してきたから。
アメリカは同調圧力がなく、若い世代が政治に関心を持っている。日本の若い人にも、そういう意識を持つなら、ぜひ投票してくれと思います。
●森達也(MORI TATSUYA)
1956年生まれ、広島県出身。86年、大学卒業後、テレビ番組制作会社に入社。98年にはオウム真理教の荒木浩を主人公とするドキュメンタリー映画『A』を公開。佐村河内守氏に密着したドキュメンタリー映画『FAKE』が現在公開中
(取材・文/畠山理仁 撮影/山上徳幸)