映画監督のアッバス・キアロスタミが7月4日に亡くなったことがわかった。
イラン国営放送によると、がんを患っていたキアロスタミは、治療のために訪れたパリで死去したという。76歳だった。
また惜しい才能が一つ消えた。
昔、日曜の昼過ぎ、NHK教育で「アジア映画劇場」という番組枠があり、毎週アジア各国のなかなか観る機会のない映画を放映していた。
インドネシア、タイ、香港、中国、韓国、マレーシア、イラン。
なかなか観られない国の映画ばかり。
その中でアッバス・キアロスタミの作品も紹介されていた。
【スポンサーリンク】
アッバス・キアロスタミ
ジグザグ道三部作と呼ばれる作品の第一作目「友だちのうちはどこ?」
友だちに借りた宿題を返すためにジグザグ道を上り、丘向こうの友だちの家まで返し忘れた宿題のノートを返しに行く冒険譚。
日本と違い舗装もされていない、街頭もない、地図もないから友だちの家を探すにも自分が知ってる友だちを探しだして聞いて回らないと辿りつけない。
今村昌平の「うなぎ」と同年、パルムドールを受賞した「桜桃の味」
こちらもキアロスタミ作品。
「桜桃の味」のほうが評価が高かったとも聞くが……。
自殺志願の男が、自分の自殺の手伝いをしてくれる相手を探し続ける。
ハリウッドではあまり感じない文化の違いやモノに対する価値観の差を大きく感じることが多いのもイラン映画の特徴。
未舗装の道路、町並み、宗教も考え方も違うアラブ圏の切り取られた光景は、アメリカ映画とは異なる。
是非観ていただきたいが……どっかのレンタル屋で探してください。
アマゾンはプレミアが付いてる。
以下、キアロスタミ作品以外にも面白い映画はたくさんある。
運動靴と赤い金魚
直した妹の靴をなくしてしまった兄が、妹のためにマラソン大会に出場し運動靴を手に入れようと言うストーリー。演技らしい演技なんて一切しない賢明な子供の姿は心を打つ。
幸福とはなんだろうか、と。
迷子の警察音楽隊
エジプトからやってきた警察音楽隊がイスラエルで迷子になる。
音楽隊の隊長は気難しいタイプで、若手の団員は遊びたい盛りで反発ばかり。
たまたま出会ったイスラエルの飯屋で一晩泊めてもらうことになるが……。
コメディなんだが終盤は結構切ない。結局あーなっちゃうよなぁ……若いからなぁ。
オフサイド・ガールズ
スタジアムでどうしてもサッカーを観たい女性らがなんとかスタジアムに入ろうと悪戦苦闘。
チケットがないから?ではなく女性はスタジアムでサッカー観戦なんてしてはいけない!と向こうでは決まっているのだそうで。
映画「少女は自転車に乗って」の中で「女の子が自転車に乗るだなんて!」と叱られるシーンが有るんですが、あちらの方ではまだまだ女性に関して旧弊的な考え方が強い。
azanaerunawano5to4.hatenablog.com
売り上げランキング: 112,986
自由の壁とヒップホップ
ガザ地区のヒップホップシーンを描いたドキュメンタリー「自由の壁とヒップホップ」
同じ国の中を行き来するだけで通行許可が必要で、下手をすれば理由もなく逮捕される。
そんな中で、若者らがラップで自由を歌う。
是非見ていただきたい作品のひとつ。
azanaerunawano5to4.hatenablog.com
キアロスタミがなくなってもその作品は多く残っているし、イランやイスラエルなどにも面白い映画はたくさんある。これを機会に観てみるなんてのはどうだろう。