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【社会】

憲法本、日本の岐路で関心高く 書店活況

憲法関連本のコーナーを担当した熊沢里美さん(左)と安斎千華子さん。コーナーは10月まで続く=東京都豊島区のジュンク堂書店池袋本店で

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 参院選に合わせ、憲法に関する本の出版が相次いでいる。各地の書店では憲法本の特設コーナーがつくられ、読者の関心は高い。今回の選挙では、自民党などの改憲勢力が改憲発議の要件となる三分の二以上の議席を確保するかどうかが焦点の一つ。書店員らは「改憲・護憲の論争の前に、憲法そのものを知ろう」と呼び掛ける。 (出田阿生)

 ジュンク堂池袋本店(東京都豊島区)では、憲法を考えるために学者や作家、書店員が選んだ七百冊以上の本を並べた。

 ユニークなのは、詩人の谷川俊太郎さんや社会学者の上野千鶴子さんら、専門外の十二人が自由に選んだ本棚だ。翻訳家・作家の柴田元幸さんは、オーウェルが全体主義の近未来を想像して描いた小説「1984年」を選び、「日本の2016年はどれくらい1984年か?」という直筆のメッセージを添えた。貧困農民を描くスタインベックの小説「怒りの葡萄(ぶどう)」には、「大企業と災害が個人を潰(つぶ)す話がこんなに現代的に思える世になるとは…」と書き添えた。

 本棚には安倍晋三首相の著書も。最近の売れ筋は自民党の改憲案を平易に解説した「あたらしい憲法草案のはなし」(太郎次郎社)で、「入荷してもすぐになくなる人気」だという。

 ほかにも、マンガやSF小説など「えっ、これが憲法と関係あるの?」と思わされる本も並ぶ多彩な内容となっている。

 担当した書店員安斎千華子さん(35)と熊沢里美さん(28)は「日本は憲法改正という大きな岐路に立っている。改憲の是非はさておき、日本の『いま』が憲法によってどうかたちづくられ、『これから』がどうなるのか、考えるきっかけにしてもらいたかった」と話した。

◆中身知らずに是非語れない

 憲法に関する本というと堅いイメージがあるが、参院選から選挙権が十八歳以上に引き下げられることもあり、最近は若者にも手に取りやすい本が目立つ。

 「憲法って、どこにあるの? みんなの疑問から学ぶ日本国憲法」(集英社)を出版したばかりの谷口真由美・大阪国際大准教授(41)は「憲法があることが当たり前過ぎて、みんな思考停止してると思いますねん。『人権ってなに?』って聞かれて即答できる人がどれだけいるやろか。中身を知らずに、変えた方がいいとか、いや守るべきだ、とか言えませんよね」と話す。

 大学の授業で「憲法を尊重して守る義務があるのは誰ですか?」と質問すると、大半の学生が「わたしたち国民」と答えるという。答えは「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」(99条)。「権力の暴走を防ぐために縛る」のが憲法だ。著書ではこうした例を挙げ、憲法が生活基盤となっていることを易しく解説した。

 「憲法はどこにあるかといったら、わたしたちの日常すべてに存在してる。赤信号で止まるのも、憲法に基づいて決まってること。まずは憲法そのものを読んでほしい」

 

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