露骨な批判が飛び出した背景には、米鉄鋼業界が限界に達したことがある。米国の鉄鋼輸入量が米国内生産量の半分に相当する4400万トン(2014年)まで増え、多くの鉄鋼メーカーが低金利で延命する「ゾンビ企業」化した。USスチール昨年、高炉5基のうち2基を停止し、今年4月には従業員の25%を解雇すると発表した。韓国鉄鋼業界関係者は「なりふり構わない米国がさらにどんな規制を打ち出すか分からない」と不安を隠さない。
■韓国国会の資料まで根拠に
韓国鉄鋼業界は米鉄鋼業界の強硬姿勢が提訴や米政府の呼応につながると懸念している。現時点で調査が完了していない反ダンピング関連の案件は5件で、最終判定が出た案件も再審申し立てが可能であり、紛争はさらに増えそうだ。
米鉄鋼メーカーの積極姿勢は想像以上だ。最近には韓国の国会議員が提出した大企業への電気料金優遇に関する資料まで持ち出し、問題視している。13年の韓国国会での国政監査で、ある国会議員は「現代製鉄、ポスコなど大企業がコスト以下まで電気料金を割り引かれている」と主張し、この資料は14年に米鉄鋼業界が韓国鉄鋼業界を提訴する根拠として使用された。
「優遇ではない」という主張が認められ、昨年には「シロ」判定が下されたが、同様の内容が盛り込まえた国会産業通商資源委員会の報告書は今年4月、米鉄鋼メーカーが韓国製厚板を反ダンピングで提訴する際に再び根拠とされた。通商紛争の専門家、李性範(イ・ソンボム)弁護士は「米商務省が韓国の鉄鋼メーカーと韓国電力公社に資料提供を求めており、説明に時間とコストがかなり費やされている」と語った。
ポスコ経営研究院のキム・ジソン首席研究員は「最近中国が鉄鋼産業の構造調整案を発表したが、米国の強硬姿勢は簡単には変わらないとみている。大統領選でのトランプ氏旋風、英国のEU離脱など保護主義・孤立主義の流れが続き、当面は貿易紛争が増すと考えるべきだ」と述べた。