浜矩子氏が警鐘 「EUショックはコストカットの口実に」
それでも日本で暮らす人たちの生活は影響を受けるでしょう。少しでも理由が見つかればコストを削ろうとしている人たちからすれば、今回の事態は格好の口実になります。「こんな状況では賃金を上げるのが難しい」と言ったり、本当は10人が必要なのに「とりあえず5人で」と判断したりするケースも出てきそうです。雇用環境の悪化は避けられません。中小企業も無理難題を突き付けられかねない。しわ寄せは、いつも弱いところになりますからね。
■「びびった雰囲気」が広がっている
この先、しばらくは世の中が荒れます。離脱交渉はスムーズに進みません。首相交代で保守党内もガタガタします。その先は総選挙で民族主義政党が台頭する恐れも排除できない。嫌なムードはどんどん広がっていきます。
株価がリーマン・ショックを超える大幅下げになったように、日本国内もかなりびびった雰囲気になっています。消費増税を先送りする際に「リーマン」を口にした安倍首相は、このような事態を想像していなかったと思いますが、「サミット議長国の日本は、すでに準備をしていた」と吹聴しています。チームアホノミクスは、内需の腰折れ防止を優先し、分配に回されるはずの予算を減らして帳尻を合わせにかかる。もともと財政赤字削減の本丸を社会保障費ととらえているのだから、EU離脱を神風として、医療や福祉の予算を刈り込むわけです。「まずは成長」と叫び、生活保護の基礎的な部分なども削るつもりでしょう。
直接的な影響はなくても、生活は苦しくなっていく。そんな覚悟が必要だと思います。