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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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野心家たちの共闘

セイジツ金爵家
暖炉の前で薄笑いを浮かべたセイジツ金爵が、やせ細った中年男と向き合っている。
その男は釈放されたばかりのソレイユ元銀爵であった。
「アポロ……すまない!私のために保釈金を積んでくれて!」
痩せた中年男は、涙を流してセイジツ金爵の手を握っている。
それに対して、金爵はやさしい笑みを浮かべていた。
「ふふ。幼馴染の君を見捨ててはおけなかったからね。カエデちゃんにも頼まれたし」
「カエデが……?」
自分の娘の名を上げられて、ソレイユ元銀爵は意外に思う。
「ああ。彼女も君が牢に入れられたあと、相当苦労したみたいだよ」
セイジツ金爵はカエデから聞いた苦労話を、おおげさに語った。
「すまん……ワシが改易されたばかりに、カエデにまで苦労を」
再び涙をながす彼に、セイジツ金爵は甘くささやく。
「君には泣いている暇はないよ。そんな暇があれば、なんとかしてソレイユ家を再興させないと。彼女の苦労に報いるためにも」
「そのとおりだ……だが、今のワシには何も残っておらん。領地も財産も没収されてしまった。あのにっくき金貸しのせいで」
ソレイユ元銀爵の目に憎悪の炎が燃え上がるのを確認して、セイジツ金爵はクスっと笑った。
(ふふふ……まだ心は折れていないみたいだな。人間の感情の中でもっとも強いものは復讐心だ。
復讐に燃えている人間は、決して裏切らないから使いやすい。あとは少し希望を与えてやれば)
セイジツ金爵は、ソレイユ元銀爵の前に一枚の書類を取り出す。
「実はね。我が甥であるアベルが正式に認知され、王子として認められたんだ」
「え?アベル君が?なぜだ」
「実はね……」
アベルが実はルイの実子であること。そして天竜の防具を手に入れて着実に勇者として成長していることなどを告げた。
「そうなのか……あのアベル君が」
ソレイユ元銀爵も、かわいらしくて利発な少年だったアベルについてはよく知っていた。
「君の娘であるカエデちゃんは、どうやらアベルと情を交わしたようだよ。ふふ、隠しているつもりだが、男と女のことだ。見ればすぐわかる」
「あの二人が……_?_」
意外な展開に、ソレイユ元銀爵は目を白黒させる。
「どうだい?僕は次期王の父親代わりの後見人。そして君は次期王妃の父親だ。二人でこの王国を支配して、栄華を極めることが可能だと思わないかい?」
セイジツ金爵の言葉が、甘い毒のようにソレイユ元銀爵の胸に染みる。
「だ、だが、今のワシに何ができるのか……」
「ふふ。君にはその明晰な頭脳と、よくまわる舌を持っているじゃないか。君のコネと今の話があれば、大商人からいくらでも金を引き出せるだろう。君は資金調達を頼む。僕はその金で軍備を整えよう。そしてシャイロック家を滅ぼし、われらに栄光を!」
セイジツ金爵の話を聞くうちに、ソレイユ元銀爵の胸に自信が蘇ってきた。
「いいだろう。どうせすべてをなくした身だ。もはや失うものはない。舌一つで大金を生み出してみせよう!」
「その意気さ!借金の条件など気にしなくていい。どうせ後でいくらでも踏み倒せる。未来の勇者にして国王である我が甥アベルの言うことに逆らえるはずがないからね」
セイジツ金爵とソレイユ元銀爵は、ワインが入ったグラスを触れ合わせる。
この二人の野心家により、世界は混沌の時代を迎えるのだった。
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