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若返り
「『幼竜の肉』だって?まさか!」
「あの伝説の若返り薬!アポロ、本当なのですか!」
二人は今にも玉座から降りて、掴み掛らんばかりに動揺している。
『幼竜の肉』とは、本当に若返りができる薬として、誰もが求めてきた伝説の霊薬だった。
「では、実際にごらんに入れましょう」
セイジツ金爵が合図すると、50を過ぎたくらいの太った中年が騎士たちにつれてこられる。
小さく「……オナカスイタ」と喚いていたが、ルイとアントワネットの耳には入らなかった。
「えっ?もしかして、セバスチャン?」
アントワネットが驚く。彼はは長年セイジツ金爵家に仕えていた執事で、幼いころはアントワネットとセイジツ金爵の教育係を勤めていたこともあった。
その時点ですでに中年だったが、30年を過ぎた今では老人になっているはずである。
「このものは80を超えた老人だったのですが、『幼竜の肉』を少量与えた結果、若返って中年となりました」
セイジツ金爵はドヤ顔で言い放つ。ルイもアントワネットも言葉を失って、中年を見つめていた。
「では、さらに与えてみましょう」
金爵は懐から包みにはいった一片の肉を取り出し、中年に飲ませた。
「グワァァァァァァァァァァァァァァ……」
中年は苦痛の声を上げながら、その場にうずくまる。
しばらくすると、20代の青年の姿に戻っていた。
「ほ、本物だ!」
「すごい!」
二人は目の前で起きた奇跡に感動している。
「いかかでしょうか?このクスリを持ってきた功績により、アベルを王子に……」
「う、うん!」
ルイは壊れた人形のように、勢いよく首を縦に振る。
そっさくアベルを認知し、王子にする正式な書類が作られて、ルイはサインをした。
「ついでにソレイユ銀爵も釈放して、私の元に預けていただけませぬか?」
「うん、うん、アポロの好きにすればいいよ!」
ルイは大喜びで銀爵の釈放の手続きをとる。
それらを確認して、セイジツ金爵は『幼竜の肉』を手渡す。彼はうやうやしく一礼して退出した。
「やった!これで不能になっていた○○○が復活する!」
ルイは貪るように『幼竜の肉』を口にいれる。
「陛下、私にも!」
アントワネットが隣から手を出して、肉を横取りしようとした。
「やめろ!これは全部僕のものだ!」
「私の息子が持ってきた肉ですから、私にも権利があります!」
こともあろうに玉座の上で取っ組み合いの喧嘩を始める二人。
あまりにも浅ましく、ゴウライはあわててとめようとした。
「お二人とも!見苦しいですぞ!王と銅爵夫人たるものが、飢えた餓鬼のごとく争って……」
力づくでとめようとしたが、その前に二人は肉を口にいれる。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
二人の悲鳴が二重奏を奏でる間、ゴウライは呆然と見守っていた。
二人の姿が変わっていき、20代前半の青年と美女に変わる。
「やった!」
「若返ったわ!」
玉座の間に、ルイとアントワネットの歓喜の声が響きわたる。
「あはは……どうだい。この若さあふれる姿は!」
たくましい青年となったルイが、鏡をみて悦に入る。
「うふふ。ワタクシってかわいらしい」
同じくうら若き美女になったアントワネットもにっこりと微笑む。
「はあ。なんだか急に腹がすいてきたな。食事にしようか」
「私も急にご飯が食べたくなりましたわ」
二人は腕を組んで専用の食事部屋に向かう。
大騎士ゴウライはその後姿を呆然と見送るのだった。

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