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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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操られるシーフ

「グゲェェェェェェェ!キサマラ!ワガコヲ、カエセェ」
二人がいなくなった後に、扉の奥から恐ろしい声が響き、緑色の瘴気はその場に集まっていく。
そこでは細切れになった風の魔公シーフの体の残骸があった。
活動していた時代から400年も封印されていたことに加え、アベルにメチャクチャに切り刻まれ、さらに「風のエメラルド」も奪われたので、もはや再生することもできなかったが、シーフの思考は闇の中で途切れることなく続いていた。
「情けない……せっかくの復活のチャンスだったものを。ワシはもしかして、永遠のこの場で土くれとして生き続けるのか?」
ぐちゃぐちゃになった脳で嘆くが、うまく考えがまとまらない。
そのまま永遠の絶望に沈もうとした彼の意識に、何かが触れてきた。
(ん?なんだ?)
細切れになった自分の肉体に、緑色の瘴気がまとわりつく。
それは彼の細胞の一片にまで侵入し、支配しようとしていた。
(ま、まさかフェザードラゴン?どういうことだ!なぜワシを……)
そこまで考えたとき、脳にまで瘴気が進入してきて思考をのっとられてしまう。
(ワガコヲ……トリモドセ)
(ハイ)
もはや脳まで支配されてしまったシーフの肉体は、どんどん再生されていく。
数分後、体中に醜い傷跡がついた緑色のグールとしてよみがえるのだった。
完全に復活したシーフは、風の墓場を出た。
検索(サーチ)
世界中から目的物の居場所を探る風の検索魔法をかけると、二つ反応があった。
一つは弱々しくすでに死んでいるようで、ここから東に向かっている。
もう一つは力強く、生命の息吹にあふれており、ここから西にいったところにあった。
「ドラゴンサマ……アルジ……」
シーフは命令を果たすために、静かに風の墓場を後にするのだった。
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