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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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勇者の救援

風の墓場
急いでそこにかけつけたアベルは、封印が破られていて驚く。
「まさかカエデ姉、一人でダンジョンに向かったのか?」
慌てて中に入ると、中は真っ黒で瘴気に満ちていた。
中からキイキイという魔物の声が聞こえる。
「ライト!」
アベルが呪文をとなえると、全身から聖なる光が発せられて闇を駆逐する。
明るくなったダンジョンで、何匹もの汚らわしいグールが蠢いているのがわかる。
「『太陽剣』汚らわしいものたちよ!滅ぶがいい!」
持っている『鋼の剣』に光の魔力を伝わらせて、グールを切り刻む。もともと400年も封じられて物理的に腐りきっていたグールたちは、聖なる剣に貫かれて光の中に消え去った。
「あはは!どんどんこい!」
アベルは調子に乗ってグールを切りまくる。彼らの魔力を吸収して、さらに強くなっていった。
あっという間に最深部につくと、遠くから声が聞こえる。
「いやっ!離して!」
「ぐひひ。たまらんのう」
少女の澄んだ声と、いやらしそうな中年の声が聞こえる。
「カエデ姉!」
アベルは声が聞こえるほうに全力疾走していった。

最深部 祭壇
首のない胴体に拘束された少女の首筋に、生首が噛り付いている。
「ふふふふふふ。わしは運がいい。まさかわしと同じ風の魔力もちとはな。なんと美味い魔力だ。たまらん」
剥げた落ち武者みたいな生首は、カエデから魔力を吸収して精気を取り戻していく。
『後すこしでソレイユがかけた封印もとける。そうしたら、また世界中の宝物を盗んで、女をはべらかして……』
闇の中にシーフの笑い声が響く。彼の首の切断面に貼り付けられている鉄板に書かれた呪文の文字が、どんどん薄くなっていった。
『くふふ。さあ、あともう一息だ……ん?』
いい気になって魔力をすすっていたシーフは、違和感を感じてまゆをあげる。
強力な光の魔力を持った存在が近づいてきたからである。
『な、なんだ!貴様は……』
「カエデ姉!!」
巨大な扉がある部屋に入ったアベルは、緑色の髪をした美少女と、その首筋にかじりついている生首を見て怒りに燃える。
「よくも俺のカエデ姉を……許さない!」
『鋼の剣』でいきなり切りかかってきた。
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