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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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お茶会

カエデは隣のセイジツ金爵邸に招かれる。
豪華な風呂に入れられた後は、メイドによる徹底的なお色直しが行われ、みすぼらしいメイドから久しぶりに貴族の令嬢に生まれ変わっていた。
「おじ様……こんな綺麗なドレスなんか……」
カエデが着ているのは、古い型ではあるが上質の白いドレスだった。
「ははは。いいんだよ。姉のアントワネットが昔着ていたお古だから。今じゃちょっと流行おくれだから、誰も着る者はいないし。カエデちゃんにあげる。それに、よく似合っているよ」
優しいセイジツ金爵は、優雅に紅茶を飲みながらカエデをほめる。
「おじ様……ありがとう」
「さあ、座ってお茶を飲みなさい。何があったのか、話してごらん」
カエデに豪華なお菓子を勧めながら、笑いかける。
彼女は涙ながらに現在の窮状を話し始めた。
「……なるほど。ソレイユ家が改易されてカエデちゃんはお母さんの実家に引き取られたけど、そこの人たちは冷たくて、君に下働きのようなことばかり押し付けてくるのか」
「そうですわ!まるで私は奴隷にでもされてしまったかのよう。あんまりですわ!」
瞳を潤ませ、手を前に組んで訴える。フーマ家では誰も彼女の言うことに耳を貸してくれないので、話を聞いてくれる彼に必死にすがっていた。
「おじ様!なんとかお父様を救って、ソレイユ家を再興させる方法はないのでしょうか?」
「そうだねえ……」
セイジツ金爵は腕組みをしながら考えこむ。
しばらくして、彼の顔に狡猾そうな笑みが浮かんだ。
「たしか、君の家柄は風の魔法の使い手が多かったね。君もかなり使えると思っていたけど」
「はい!風の魔力は誰にも負けませんわ!」
カエデは自慢そうに胸をはる。事実、彼女は国中で一番の風の魔力の持ち主として、貴族社会ではちょっと有名だったのである。
もっとも、お嬢様である彼女はまともに魔法について学んだことはなく、せっかくの魔力も宝の持ち腐れ状態だったが。
「そうか……なるほど。君のお父さんのソレイユ銀爵と僕、そしてルイ国王陛下は幼馴染だった。そして僕の姉のアントワネットは陛下の寵愛を受けている。何か貢物を陛下に献上したら、恩赦をもらってソレイユ家が再興できるかもしれない」
「貢物……ですか?」
それを聞いて、カエデはしゅんとなる。今の彼女は王が気に入る貢物どころか、小遣いにもこまる貧しい身分である。どうしていいかわからなかった。
しかし、そんな彼女の心の内をすべてわかっているという風に、セイジツ金爵は続ける。
「もちろん。そんじょそこらのモノじゃだめだ。だけど、君も知っているだろう?ソレイユ家に伝わる『シーフの右手』の伝説を」
「ええ……父から聞かされたことがあります」
以前、ソレイユ家に伝わる御伽噺を聞いたことがあった。
400年前に全世界の宝物を盗んだといわれる冒険者「シーフ」だったが、その中でも最大の宝は伝説の秘宝『幼竜の肉』である。それを食べると若返り、強靭な肉体を持つようになる。シーフはそれを食べ、さらに魔族に魂を売ったことで不死身になったといわれている。
事態を重く見た初代ロスタニカ国王にして勇者アルテミックが討伐しようとしたが、倒すことはできず、『風の墓場』に彼とその眷属を封じ込めた。
そのとき彼が集めた宝のかなりの量が回収できずに共に封じられたという。
「シーフの眷属はどうも不死の魔物グールだったらしい。殺しても殺しても動き続けるから、大変だったみたいだね。結局シーフの右手を触媒にして『止まれ』という命令をかけて洞窟内に封印するしか方法がなかったんだ。それをなした者が、君の祖先で勇者の仲間の一人、魔術師ソレイユだったらしいね」
ソレイユはその功績によって領地を与えられ、初代ソレイユ銀爵になったという。
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