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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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貧しい生活

それからの生活は、今までとまったく違ったものとなる。
貴族専用の留置所に一ヶ月も閉じ込められたのである。
もちろん貴族用だけあって一般の刑務所とは雲泥の差があったが、今まで贅沢をし放題に生きてきた彼女たちにとっては地獄のようにつらかった。
「ベッドが狭い!」
今まで寝ていたベッドに比べて半分以下の狭さで、綿も少なく硬かった。
「薄いスープに硬いパン!量も少ない!」
15歳の健康な胃袋がひもじさを訴えてくるが、決められた量以上はいくら要求しても与えられない。
「メイドがつかない!」
今まで着替えすらメイドに任せていた貴族の姫君だったのだが、留置所にはメイドがおらず、掃除洗濯などはまるで下女のように自分でせねばならなかった。
そんな地獄を一ヶ月も味わった後、ようやくカエデは留置所を出る。母親の実家である元ソレイユ銀爵家に仕えていたフーマ家が身元引受人になってくれたのである。
「……やっと、貴族に戻れますわ」
ウキウキしてフーマ家の王都屋敷に移り住んだカエデだったが、すぐに期待は絶望に変わった。
「これは……なんですの?」
フーマ家の王都屋敷は、館どころか庶民の家に毛が生えた程度の貧乏屋敷である。
かろうじて個室が与えられたものの、フーマ家でも似たような食事、似たようなベッドしか用意されなかったのである。
「どうして私がこのような目に!」
兄であるサブロウ・フーマに食ってかかるが、彼は限りなく冷たかった。
「……残念だがフーマ家には、無駄飯ぐらいの戯言を聞く余裕などない」
「なんですって!」
激怒するカエデだったが、彼はまったく取り合わない。
「広いベッド?豪華な食事だと?ふざけるのもいい加減にするがいい。我らは今まで常に民と同じ様な所で寝て、同じような物を食べてきたのだ。そんな贅沢は必要ない。雨風しのぐ家があるだけ、ありがたいとおもうがいい」
サブロウの言っていることは事実で、貴族とはいえ地方の騎士階級は貧乏である。特にカエデを冷遇しているわけではない。むしろサブロウ以下家中一同はもっと質素な生活を心がけていた。
「ああ、なんて私は不幸なのでしょう……こんな貧乏な家に来てしまって」
なめざめと泣くカエデに、サブロウは呆れる。
「……嫌なら出て行くがいい。そもそもお前の保釈金を一万アルも支払ったのだ。妹だからと引き取ってみれば、家事もできないでくの坊。このままでは恥ずかしくで嫁にもだせぬわ。今日からオババにしっかりと婦女の心得を叩き込まれるがよい」
そういい捨ててサブロウは部屋を出て行き、代わりに意地悪そうな婆さんが入ってきた。
「ひっひっひ。お嬢様はずいぶん甘やかされてきたようですじゃ。これからこのババがしっかりと矯正させますじゃ!」
「い、いやーーーーー!」
それから掃除洗濯料理とありとあらゆる家事を叩き込まれる。彼女の不幸はいつ終わるとも知れなかった。
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