挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
150/205

勇者病


「はい。これでアベル様はFランク冒険者となりました。あちらのボードに張り出してある仕事の中から選んで、こちらにもって来てください」
受付け嬢にそういわれたアベルはFランクの仕事が張り出しているボードを見たが、「薬草採取」「ゴブリン討伐」「毒消し草採取」「手紙の配達」などしょぼい仕事ばかり。しかも報酬も3~7ギル程度で、金貨レベルの仕事はなかった。
一通り目を通したアベルはふんっと鼻を鳴らすと、窓口に戻る。
「はい。アベル様。どういった仕事をなされますか?」
「ふん。ボクのような勇者の血を引く高貴な者が、あんな仕事できるか!」
思い切り見下した態度で、ギルドが紹介する仕事を馬鹿にし始めた。
それを聞いた受付嬢や、談話室で歓談していたベテラン冒険者たちがやれやれといった顔になる。
「……また馬鹿な貴族のお坊ちゃんがきたぞ」
「ああ。ちょっと魔法をかじった程度で、魔物に対抗できるわけないのにな」
「しかも、付き人もいない一人だ。ということは正式な貴族の子息でもないな。さしずめ、愛人の子といったところだろう。手柄を上げて認められたいんだな」
そんなささやき声が聞こえてきてプライドが高いアベルは顔を真っ赤にしたが、このときは我慢して聞きたいことを話し始めた。
「……この近くに、勇者アルテミックがつけていたという伝説の兜があるはずだ。どこにあるんだ?」
「え?さ、さあ。分かりかねますね」
受付嬢はとぼけるが、実は多少経験を積んだ冒険者ならその答えは知っていた。
冒険者たちの間では有名な話だからである。
しかし、危険な魔物が生息する山にあるので、受付嬢はあえて惚けたのだった。
「とぼけるな!さっさといえ!ボクは勇者だから、その兜を身に付ける資格があるんだ!」
馬鹿にされたと感じたアベルは、受付嬢の胸倉をつかむ。
「きゃあああ!乱暴はやめてください。言いますから!この町の東にある「針の山」にあるといわれています」
強い力で揺さぶられて怖くなった彼女は、あっさりと兜がある場所を白状した。
「ふん。さっさと言えばよかったんだよ。猫族の分際で生意気な態度をとるからだ!」
「ふぇぇぇぇぇん」
アベルに乱暴にされた受付嬢は、半泣き状態である。
何人かの冒険者が憤慨して腰を浮かせるが、白い肌の美女に止められた。
「みんな、落ち着いて。今日の当番は私達『白姫』でしょ。順番は守らないと」
美女にいさめられて、筋肉ムキムキの冒険者は腰を下ろした。
それを苦笑してみた美女ノルンは、対面に座るイケメン剣士に声をかける。
「ほらほら。また勇者病をこじらせた坊ちゃんがきたわよ。あなたの役目」
笑っているノルンが剣士ケインをけしかける。ちなみに勇者病とは、魔法が使えるようになった貴族の少年少女が自分を勇者だと勘違いして、家を飛び出して冒険者になることである。冒険者ギルドは勇者ごっこをしたがる彼らに手を焼き、ベテラン冒険者にあることを頼んでいた。
「気がすすまないなぁ。ノルンがやってくれよ」
そんなことを言いながら、ケインは酒を飲む。
「だめよ。私みたいな美人が絡んだら、純真な少年が道を誤ってしまうでしょ?」
たまたまこの町に来ていた白姫ノルンが、くすくすと笑う。
「俺みたいな優男がすごんでも、ビビッてくれないし、下手をしたら男色少年趣味だと誤解されてしまうぜ。ああ、自分の美しさが、恨めしい……」
鏡をみてうっとりと自分に陶酔するケインに、ノルンは呆れる。
「こういう役目はゴローが一番適任なんだけど、防具を見に行くって出て行ったし……だから、あなたしかいないのよ。お願い」
ノルンに頼まれて、ケインはしぶしぶ腰を上げる。
そして、出て行こうとするアベルの前に立ちはだかった。
cont_access.php?citi_cont_id=875042061&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ