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添い寝
兵士たちの包囲網を突破したリトネは、軽い足取りで騎士たちに迫っていく。
「みんな!魔法を使え!」
焦ったトーラの指示により、騎士たちが杖を取り出すが、すでにリトネの姿は地上になかった。
「ど、どこにいった?」
「トーラ!上!」
ナディに言われて、あわてて上を向くと、10メートルの高さにリトネはジャンプしていた。
「マジかよ……うて!」
トーラの号令で空中にいるリトネに魔法が放たれる。いくつかは当たったが、風に舞う羽毛を銃で打つようなもので、まったくダメージを与えられない。
「うそだろ!魔法を受け流している。こんなことって!」
次の瞬間、リトネはトーラの頭の上に降り立った。
「こ、このっ!」
「はい。いただき」
リトネはトーラの鉢巻を取って、軽くジャンプする。そのまま次々と騎士たちの頭や馬の上に着地し、鉢巻を奪っていった。
「……くっ!騎士たちが邪魔になって魔法が使えない!リトルレット、罠を作れない?」
「無理だよ!リトネ君地面に降りてこないもん!」
ひらりひらりと空を舞いながら近づいてくるリトネに、手出しができない。
「はい。もらうよ」
「くっ!」
結局、ナディとリトルレットの鉢巻もとられてしまった。
大部分の騎士と婚約者たちが負けたのをみて、将軍は手を上げる。
「戦闘を終了せよ。リトネ様の勝利だ!」
リトネの一段上がった超人的強さを見て、士気を失っていた騎士たちは、武器を放り出して降伏するのであった。
シャイロック家
夕食後、婚約者たちが集まって相談していた。
「……どうする?」
「これから添い寝って……」
ナディとリトルレットは顔を赤くして、もじもじとしている。
それに対してトーラは平然としていた。
「だらしねぇな。まあいいや。お前たちはいいよ。あたいがいってくるから」
そういうトーラの格好はスケスケネグリジョに大胆な下着姿である。ご丁寧に枕を持参していて、準備万端だった。
「……ダメ!」
「そうよ!リトネ君まだ13歳だよ!何考えてんのよ!この痴女!」
そのままリトネの部屋に行こうとするのを、死に物狂いでとめられた。
「何するんだよ!」
「……トーラを行かせたら、リトネが心配」
「そうよ!その、そういうことはちゃんとお互いの気持ちを確かめてからというか、とにかくダメなの!」
ギャーギャーと騒ぐ婚約者たちを見て、リンは呆れていた。
(みんな、どうしたのかな?私はおにいちゃんと一緒にお休みできて、うれしいけど)
可愛らしいピンクのパジャマを着たリンは、首をかしげる。
(お話が終わるまで時間かかりそうだから、先にいっちゃおう)
そう思うと、リンはそっと部屋を出てリトネの私室に向かった。
リトネの部屋。
大きなベッドの上で、リトネはワクワクしながら待っていた。
「いや~誰が来るかな。楽しみだ」
散々地獄を潜ったリトネは、これから来る楽しい天国にドキドキしていた。
「……ナディかな?まあ下手に手を出したらひっぱたかれるから、頭なでたり腕枕したり、耳かきをしてもらったりとか軽いプレイで、ナディが恥ずかしがるのを楽しもうかな」
リトネにとってナディは婚約者というより、可愛いけどちょっと生意気な妹のような気がするので、ついついイタズラしてしまうのだった。
「……リトルレットかな。彼女は大人だから合法なんだよな。なら、ちょっとイケナイことも……」
リトネの鼻の下がだらしなく伸びている。
「……トーラだったらどうしよう。ここは覚悟を決めて、大人の階段を登るべきか……」
真剣に悩んでいると、執務室のドアがノックされる。
「おにいちゃん。こんばんわ。一緒にお休みに来たよ!」
満面の笑みを浮かべて抱きついてきたのは、リンだった。
「リンか。ちよっと予想外だったな。まあいいか、ほら」
布団をめくってリンを招く。彼女はうれしそうに布団の中に入ってきた。
「えへへ。一緒に寝るのって、久しぶりだね」
「ああ。ロズウィル村の平原でお昼寝して以来だな」
昔のことを思い出して、ほんわかした気分になる。
「そういえば、あの時おにいちゃんに子守唄歌ってあげたよね」
「そうだったな」
「また歌ってあげる」
そういうと、リンは優しい声で歌を歌う。
「天空の雲 はるかな道 神の城」
「選ばれし勇者のみが招かれん」
「天空の竜 人の中でただ一人 そのものを愛さん」
「その名はアルテミック 神に至る道を歩む 孤高の勇者なり」
「竜剣ドラクルを抜きて後継者になるのは誰か?」
全世界で有名な、勇者アルテミックを讃える歌である。
やさしい歌声を聴きながら、リトネの意識は薄れていった。

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