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大軍無双
一週間後
公害の広場に、シャイロック軍2000人が集まっていた。
「リトネおぼっちゃんと再戦だってよ」
「……ふふ。腕が鳴るぜ!」
騎士も兵士もこの間の戦いで勝利したので、自信をもっている。
そんな彼らに対して、将軍が演説を始めた。
「えーーっと、こほん。リトネおぼっちゃまの強い希望で再戦となったわけだが、その、やりすぎないように。というか、勝ってはいけない。なるべく判らないように、手を抜くように」
いきなりわざと負けるように言われて、兵士たちの士気が下がる。
「なんでですか?」
そんな声が上がったので、将軍は叱咤した。
「ばか者!そもそも年端もいかぬ少年を、2000人の兵が寄ってたかってなぶってなんとする!大人気ないにもほどがあるぞ。ましてリトネぼっちゃまはわれらの主だ!」
将軍にそういわれて、兵士たちは顔を見合わせる。あまりの強さに忘れていたが、たしかにリトネは13歳の少年だった。
「……たしかに」
「ケツ丸出しで吊るしたのは、まずかったかな?しょうがない。今回は花を持たせて……」
そんな声が大勢を占めるようになったとき、いきなり壇上にトーラが上がってきた。
「いいや、手前ら全力で戦え!手加減なんかするんじゃねえぞ!」
「ト、トーラ様、なにを……」
あわてる将軍を無視し、トーラはさらに続ける。
「誰がなんと言おうと、リトネは勇者アルテミックの後継者だ!あいつはやがて世界を救うほどの大物になるだろう。ちょっと負けたぐらいで駄目になるほど柔な男じゃねえ。そんな男にあたいは惚れたりしねえぜ!」
トーラは壇上で熱弁を振るう。ナディとリトルレットも上がって来た。
「……本当の勇者なら、敗北を糧に大きく成長するはず。甘やかしては駄目」
「リトネ君から再戦を申し込んできたということは、たぶん何か勝算があるんだよ。それにこたえてあげるのが、ボクたちの役目じゃないかな?」
婚約者たちの演説をきいた兵士たちは、再び士気を取り戻す。
「うおおっ!なんで出来た婚約者たちだ。坊ちゃんが羨ましいぜ!」
「そうだな。甘やかすだけが愛情じゃねえ!坊ちゃんを真の勇者にするために、全力で戦ってやろうぜ!」
兵士たちは武器を振りかざして雄たけびをあげるのだった。
(……これで大丈夫)
(助かったよ。添い寝だなんて……さすがにまだ早いもんね)
(これでリトネのケツはあたいのもんだぜ!)
婚約者たちはそれぞれの思いを抱えながら、戦闘準備をするのだった。
戦闘前に、全員が赤い鉢巻をつける。これはリトネからの提案で、鉢巻をとられたら退場というルールだった。
1人対2000人の騎馬戦が再び始まる。
「はじめ!」
将軍の号令で、一気に前方から歩兵たちが槍衾を作ってリトネに迫ってきた。
「うりうり!ぼっちゃん。悪いけど勝たせてもらいますぜ!」
長い槍を突き出して迫ってくる。
そして、騎士たちと婚約者はリトネの後ろに回ろうとしていた。
「いいか?とりあえず歩兵たちに当たらせて様子を探る。前と同じならそれで対抗できるだろうが、あのリトネだ。絶対なにか用意しているに違いねえ。もし歩兵が突破されたら、馬の足を生かして逃げ回りながら魔法を浴びせ、リトネを消耗させて気力切れを狙うんだ」
戦い前にトーラが立てた作戦はこのようなものだった。
彼女の思惑は当たり、リトネはすぐに歩兵に取り囲まれる。
「さっそく始まったようだぜ……え?なんだ?どうなってんだ?」
トーラたちの目がいっぱいに開かれる。彼女たちが見た光景は、屈強な兵士たちがまるで風船のように軽々と空にほうりあげられる光景だった。
「イヤァァァァァァァァァァァァァァァ」
リトネは襲い掛かってくる兵士たちに、これ以上ないほど冷静に対処できていた。
(恐れるな。相手は軽いんだ。ビニール人形の集団みたいなものなんだ!『虚竜拳』」
リトネの体がふわりと浮く。
「は?」
次に目の前に展開した光景を見て、兵士たちの目が点になる。
なんとリトネは槍の穂先に爪先立ちで乗っていた。
「な、なんだ?」
「重さを感じない!」
リトネは動揺する兵士の体に、やさしく触れて『軽気』を広げる。
「え?」
180センチはある大柄な兵士の体が、小柄なリトネの片手で持ち上げていた。
「ほら!」
まるでボールのように放り投げる。空中でリトネの「気圏」から離れた兵士の体は、重さを取り戻して地面に激突した。
「ひ、ひええっ!」
兵士たちは恐慌に駆られて槍をめちゃくちゃに振り回し、陣形を崩す。
しかし、まるで羽毛のように空を舞うリトネを捕らえることはできなかった。
「こ、これは!おもしろい!つかも、いくら『気』を使っても、外から取り入れられるので疲れない!」
調子にのってリトネは兵士たちをつかんでは放り投げる。今のリトネにとって兵士たちは、軽い風船人形のようなものだった。これなら一人で大軍相手に無双ができて当然である。
「つ、強い……」
「ま、まいりました……」
1500人もいた兵士は、リトネ1人に打ち倒されて地面を転がった。

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