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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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天竜の靴

「ネエ……ワタシヲタベテ」
「イヤイヤ、ワタシヲ」
「ズルイ。ワタシ」
『巨豚の丘』の中心に火が炊かれ、金網が載せられている。
グレートブヒーの若い少女たちは、誰がリトネに食べられるかで争っていた。
「……って、食えるか!」
ご丁寧にテーブルクロスをつけられて座らされているリトネが吼える。
いくら彼でもカタコトでも人語を話す生き物を食べる趣味はなかった。
「ソンナ……ユウシャニタベラレテ、ミモココロモヒトツニナリタイノニ」
娘たちは目をうるうるさせて迫ってくる。
「もうやだこの変態魔物!師匠、帰りましょう!」
隣で腹を抱えて笑っているマザーに頼み込む。
「まあ、待て。彼らにとっては強い相手に食べられるのが快感なのじゃ。一口でも……」
「だから、いりませんって!」
涙目になっているリトネを見て、マザーも苦笑する。
「そうか。仕方ないの。ドーンコイ、アレはもってるか?」
「ハイ。マザーサマ」
ドーンコイはマザーの前にひざまずくと、いきなりリバースしはじめる。
「オェェェェェェ……デタ!」
ドーンコイの腹から出てきたものは、金色に輝く靴だった。
「こほん。リトネよ。本日から勇者アルテミックの後継者として正式に認め、この『天竜の靴』を…」
「いらないっていっているでしょ!」
さすがのリトネも切れてしまう。靴はドーンコイの胃液にまみれていた。
「いいから、履け!これは命令じゃぞ!」
「……わかりましたよ!」
マザーに怖い顔で言われて、しぶしぶ靴を履く。予想通り重くて、ろくに動けなかった。
「これでいいんでしょ!でも、重くて動けませんよ!」
「たわけもの!先ほどの修行で何を学んだ!」
「あっ、そうか!」
リトネは靴に意識を集中させ、空間干渉係数をマイナスの方向に下げる。
すると、靴はみるみるうちに軽くなっていった。
「どうやら装備できたようじゃの」
「ええ。まあ、なんとか」
あらためて靴の履き心地を確認する。胃液にまみれていて汚いが、『軽気』によくなじんでいてしっかりと足を守っていた。
「うむ。天竜の靴を履きこなしたな。これでおぬしは立派な勇者じゃ」
「……なんでだろう。ちっともうれしくない」
リトネは渋い顔をしながら帰っていった。
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