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挑発
「……あはは。これで私たちの勝ち!」
「ナディ様!やりましたな」
騎士たちとハイタッチして喜ぶナディ。
しかし、その時メキメキという音が聞こえてきた。
「これは?」
「……まずい!」
ナデイがそういうと同時に、巨大な氷が二つに割れる。
中からマッチョになったリトネが出てきた。
「ナ~~~デ~~~ィ~~よくも!へくしゅん!」
地獄の最下層で氷漬けになっているという伝説の大魔王のような声があがる。
リトネはとっさに『剛竜拳』に切り替えて、氷魔法を防いだのだった。
怒っているリトネを見て、ナディは馬首をめぐらせて逃げまわる。
「……きゃーーー。こわい!変態パンツ魔人におそわれる~おまわりさーん」
確かに氷を割るのに『剛竜体』になって服がはじけとんだので、今のリトネはパン一だった。
「だ。だれが変態じゃ!捕まえてお仕置きしてやる!」
ドタドタと追いかけるが、馬に乗ってにげるナディに追いつけるわけがない。
そのままからかうように翻弄され、平原の中ほどまできた。
「リトルレット、お願い!」
「任せて!『錬金』」
いつのまにか近くに来ていたリトルレットが、地面に向けて杖を振る。
次の瞬間、リトネの姿が消えた。
「やった!うまくいった!」
「こんな手に引っかかるって、リトネ君もまだまだだね!」
馬を寄せてハイタッチするリトネの婚約者たち。
あらかじめ平原の中ほどに落とし穴を掘り、薄い鉄板を引いて草で隠していたのである。リトネがナディにおびき寄せられてそこに乗った瞬間、鉄板を『錬金』で柔らかくして落としたのだった。
ナディとリトルレットが馬上から穴を覗き込む。
「……これで倒したかな?」
「わかんないよ。リトネ君だもん。でもこの下は柔らかい泥だから、なかなか這い上がってこれないとおもうけどね」
二人はじっと様子を伺う。穴はしーんと静まり返っていて、何も聞こえてこなかった。
「これは……アレかも」
二人で顔を見合わせて考え込む。
「……やる?」
「……かわいそうだけど、勝負だもんね。でも、どうなるか…楽しみ」
二人はわくわくしながら、何かが入っている袋を何かを取り出す。
「……リトネ、死んだふりはよくない」
「リトネ君がこれくらいで参るわけないでしょ♪勇者なんだから。えい!」
明るく笑いながら、二人で大量の粉を穴にぶちまける。
「ぶえっくしょん!」
次の瞬間、すごい勢いで泥人形が穴から飛び出してきて、地面を転げまわった。
「くしゅん!くしゅん!なんだこれ!」
「……リトネが異世界からとりよせた、『コショウ』」
「ついでに『ワサビ』も混ぜてみました」
実に可愛らしい笑顔を浮かべて、テヘペロっとする。
これはリトネが護身用にと作り方を教えたものだった。
しばらくゲホゲホとせきを繰り返していたリトネは、涙目になりながらも立ちあがる。
「……二人とも、もう許さない!」
リトネはついに怒り心頭に達して、二人を追い掛け回す。
「きゃーーー!にげろ!」
二人は再び本陣に向けて逃げ出し、同時に歩兵の大軍が正面から迫ってきていた。

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