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大軍戦
平原にシャイロック軍が陣を張る。
騎士たちが前面に布陣し、兵士たちはその後方で長い槍を持っていた。
そらにその後方に総司令官である将軍と、魔法が使える三人の婚約者が待機する。
そしてその前方には、リトルがぽつんと一人でいた。
「あ、あの?師匠?これはいったい?」
上空で優雅に高みの見物をしているマザーに聞く。
「リトネ。確かにお主は強くなった。一対一ではこの地上では無双かもしれん。だが、勇者の後継者はその程度では済まされん。一人で大軍をも敗れるほどの力を持たねばならん」
マザーの声が冷たく響く。
「果たしてお前の力で、シャイロック家の軍が破れるかな?」
マザーに挑発されて、リトネの闘志に火がついた。
「やりましょう!『剛竜拳』と『柔竜拳』をマスターした俺なら、たやすいことです」
最近手に入れた力に奢りつつあったリトネは、簡単に引き受ける。
「……リトネ、いいの?本気でやっちゃうけど?」
「後で泣いてもしらないよ?」
「旦那のしつけは嫁さんの役目。人前でセクハラするような坊主にはお仕置きしてやらないとな」
婚約者たちも挑発してくる。
「どーんとかかってきなさい。何しても怒らないから」
それに乗せられて、胸を叩くリトネだった。
言質はとったので、婚約者たちは遠慮なくリトネにぶつかっていこうと思う。
「その意気ですぞ坊ちゃま。ぞれでは、本気で行かせていただきます」
大きな馬にのった将軍が、手を振り上げた。
「はじめ!」
将軍の手が振り下ろされると同時に、何百もの馬にのった騎士が突進してきた。
「イヤァァァァァァァァァァァァァァ」
雄たけびを上げて襲い掛かってくる騎士たちは、確かにすごい迫力である。
しかし、それなりの修羅場を潜り抜けてきたリトネは冷静さを保っていた。
「『柔竜拳』」
落ち着いて自分の体を柔らかい『気』の膜で覆い、襲い掛かってくる騎士たちに相対する。
彼らが持っているのは穂先を布で覆った槍や模擬戦用の刃引きが入った剣だが、突かれたり殴られたりしたら充分危険なものである。
しかし、リトネは恐れることなく騎士たちの前に立ちはだかった。
馬の突進を柔らかい『気』で受け止めて、足を止める。
「『柔竜鞭』」
ひるんだところを騎士たちを『気』の鞭で打ち据えて落馬させていった。
「くっ!強い!」
「第二陣 行け!」
第一陣が全員打ち倒されたのを見て、将軍が命令を下す。
突進してくる人馬の群れを見ても、まだリトネは余裕だった。
「ふっ、何度来ても同じだ!かかってこい!」
戦いの高揚感を感じて、リトネは雄たけびを上げる。
しかし、第二陣の騎士たちはリトネに正面から戦いを挑むことをさけ、周りを取り囲んだ。
「お前たち……なにを?えっ?」
次の瞬間、騎士たちが一斉に網を投げかける。『柔竜拳』の柔らかい気に包まれた体ごと、リトネは網にとらわれ、グルグルと縛られてしまった。
「今だ!ナディ様、お願いします!」
「任せて!」
騎士たちの一番後ろに馬に乗ってついてきたナディが、喜色満面に杖を振る。
「……いままでの仕返し。『闇氷』」
多少手加減しながら、死なない程度の冷気で覆う。
リトネはそのまま氷漬けになってしまった。

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