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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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軍事訓練

領都エレメントの郊外
緑豊かな平原がひろがる場所に、リトネとシャイロック軍は来ていた。
リンたち婚約者とマザーも一緒である。
「よし、ここらでよかろう。全軍とまれ!」
リトネの命令により、整然と進行していた騎士たちは馬を止める。
「では、野営の準備にかかれ!」
軍を統括する将軍の的確な指揮により、まずリトネの本陣と婚約者とマザーが泊まる豪華なテントが中央に作られる。
それを取り囲むように兵士たちのテントが建てられていった。
シャイロック家の軍が見事に統制されているのを見て、マザーは感心する
「ほう。見事なものだな」
「そうでしょう。シャイロック家の軍は評判いいんですよ」
リトネは自慢そうに胸をそらす。たしかに他の貴族家の軍より装備も充実しており、士気も高かった。
行軍に際して充分な補給を整えるように徹底しているので、進軍した先で略奪などが行われることもなく、兵士たちのモラルも高い。
それというのも、平和な世にあっては兵士に求められるのは量より質だと理解していた先々代領主が農民から徴兵するのではなく、兵士を志願制の専門職として徹底的に質の向上を計ったからである。
おかげでシャイロック領の治安はロスタニカ王国一を誇っていた。
そんな彼らをみて、マザーにやりと笑う。
「うむ。これならお主の次の修業に役立つだろう」
そのつぶやきに、リトネは不安になる。
「え?シャイロック家の軍事訓練が見たいってついてきたんじゃ?」
「ああ、見せてもらった。今から次の修業の準備を始めるので、お主はそこに入っておれ」
できたばかりの豪華なテントを指差す。
リトネは不安を感じながらも、おとなしくしたがった。
それを見送ったマザーは、婚約者たちと将軍を呼び集める。
「今から、リトネの次の段階の修業に入る。その前に、コテンパンに打ち負かしてやつの思い上がりを打ちくだく必要があるのじゃ。お主たちにも協力してほしい」
そういって、これからすることを説明する。
「……いや、それはお坊ちゃんがかわいそうじゃないですかね?」
将軍は少しリトネに同情的だったが、婚約者たちは乗り気である。
「……それ、いいかも。調子に乗っているリトネにはいい薬」
ナディが嬉しそうに声を上げる。
「確かに、最近のリトネ君ってちょっと自信もち過ぎかも。それに、一度リトネ君とは戦ってみたかったんだ」
リトルレットも楽しそうに『自在の工具』を取り出す。
「その話、乗ったぜ!あいつにはこの間、騎士たちの目の前で辱められたからな。それに、一対一での強さを手に入れたぐらいで満足するような男になってほしくねえ。勇者の後継者なら、一騎当千のツワモノじゃないとな!」
トーラは豪快に笑う。
「あ、あの……お兄ちゃんかわいそうじゃ?」
リンは反対するが、マザーに説得される。
「大丈夫じゃ。やつも強くなっておる。死ぬことはないじゃろう」
「でも……」
「リンはテントに控えておれ。確実にお主の治療の力が必要になるからの。なに、心配するな。ワラワが見守っていてやるから」
そこまで言われて、リンもしぶしぶ同意する。
「いいですか?くれぐれもお兄ちゃんを苛めないでくださいね」
そういいながら、リンは救護用のテントに入っていった。
「……何回ももてあそばれた仕返し」
「ふふ。リトネ君は勇者なんだから、ちょっとぐらい大丈夫だよね」
「こんどはあたいが縛り上げて、ひん剥いておケツをペンペンしてやるぜ」
リン以外の婚約者はリトネとの戦いを楽しみに準備に取り掛かるのだった。
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