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リトネの思い上がり
シャイロック城 中庭
今日も騎士たちは訓練に汗を流していた。
「なあ……俺たちもがんばらないといけないと思わないか?」
「ああ……」
中庭で騎士たちがささやき返している。
彼らの前には、マザードラゴンにしごかれているリトネがいた。
「今日は60メートルじゃ」
「ふっ。『柔竜拳』なら余裕ですよ」
「……だんだん生意気になってきたのう」
最近自信を持ち出したリトネの頭をつかみ、マザーは宙に浮き上がる。
あいかわらず高いとこから落とされる修業は続けられていた。
「……あ、あいつ、毎日こんなことをしていたのか?」
修業の様子を見ていたトーラは驚いていたが、騎士たちはもう慣れっこである。
「……俺も最初は平民の子が跡継ぎで大丈夫かなと思っていたけど、ぼっちゃんは思ったより根性があるよな」
「ああ。俺ならあんな修行は絶対に受けたくねえ」
兵士が恐ろしそうにつぶやいた途端、空から叫び声が降ってきた。
「ああああああーーーーなんてね」
空中で華麗に体勢を立て直し、足を下にして柔らかい『気』を何重にも展開する。
ポスッという音がして、軽々と着地していた。
「どうです?これでもう師匠なんて怖くありませんよ」
「調子に乗るでない」
マザーは空中で苦笑するが、周りの騎士たちは複雑な顔をしていた。
「……だけど、坊ちゃんに俺たちって必要なのかな?」
「ああ。坊ちゃんは強いからなぁ」
あまりにも超人的な修業こなしているリトネを見て、騎士たちは自信を失っていた。
マザーが地上に降りてきて、リトネとトーラに命令する。
「では、組み手を始め!」
「はいっ!」
「おう!」
リトネとトーラが一対一でぶつかりあう。
トーラもすばやい動きで拳を振るい、何百発も急所に当てるが、もはや完璧な防御を手に入れていたリトネの敵ではなく、攻撃を受け止められたところを『気』によって拘束される。
「あはは。僕の勝ちだね」
「……ていうか、反則だよ!攻撃も通じないし、気がついたら変な感触の透明な何かに絡めとられているんだ。勝てるわけないだろ!」
全身を見えない『気』の紐で縛り上げられたトーラが悔しそうにわめく。なぜか大きな胸が強調されるようにより押し出されていた。
「てか、なんなんだよこれ!体中が締め付けられて……あんっ」
トーラは何かの刺激を感じて、思わず色っぽい声がでる。
「……えっと、女性を完全に拘束できる縛り方で、亀甲……」
「説明はいいから、さっさとほどきやがれ!」
「あはは。トーラ可愛い」
変なポーズを取らされて、顔を真っ赤にして喚くトーラをリトネは楽しそうにみつめる。
その様子を、婚約者たちは冷たい目で見ていた。
「お兄ちゃん。ひどい」
「……リトネ、女の子に変なことをしている」
「トーラちゃんかわいそう。後でお仕置きしないとね」
三人の思いに、マザーも同意する。
(ううむ。自信をもつのはいいことだが、個人的な力におぼれつつあるな。そろそろ次の段階にすすめるべきか……)
マザーはリトネを見ながら、そう考えていた。

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