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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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車の運転

それを聞いて、リトネは考え込む。
(考えろ。なにかトーラたちに最適の仕事はないか?火魔法と旅慣れていることが特技として有効なこと……まてよ?逆に考えたら)
あることを思いつき、トーラに問いかける。
「ねえ、トーラも火の魔法が使えるんだよね」
「ああ。火には自信があるぜ」
トーラは自慢そうに胸をそらす。
「なら、このストーブの火を消せる?」
リトネは灯油で燃え盛っているストーブを指差す。
「なんだ。そんなことか。ほら『消火』」
トーラが持っていたナックルを振ると、瞬く間に火は消えていった。
「……すごい」
「へへん。どうだ?『火の力』を弱めてしまえばたやすいことさ。もっとも魔法で強化された火はなかなか消えないけどな。自然の火ならすぐに消せるぜ!」
威張るトーラの手をとって、リトネは喜ぶ。
「これなら可燃物を運んでも、すぐに火を消せるな!トーラ!君たちに任せたい仕事があるんだ!これをやってくれたら、砂漠の民は永遠の繁栄を約束されたも同然だよ!」
一人で喜ぶリトネに対して、トーラはきょとんとするのだった。

次の日
トーラについてきていた直臣と、シャイロック家の騎士たちが郊外の空き地に呼び出される。
「何をするんで?」
「さあ、私たちにも聞いていませんが……」
お互いに聞き合うが、誰も何をするかほわからない。
そのまま待機していると、大きな音がして鉄の塊がやってきた。
「うわっ!」
「魔物?」
警戒する騎士たちだったが、その鉄の塊から降りてきた人間を見て矛を収める。
やってきたのは、リトネとリトルレット、そしてトーラだった。
「皆さん、驚かせてすいません。これは新たな発明品で、『自動車』といいます」
リトネからそういわれて、騎士たちはおっかなびっくり近づいてみる。
中を見ると、馬車のようになっていた。
「へえ……めずらしいな……」
騎士たちは代わる代わる乗ってみたり、ハンドルを手にとって回したりしてみる。
「これは、馬がいらない馬車のようなものです。皆さんにはこれから、この車の動かし方を学んでもらいます」
そういうとリトネは騎士を車に乗せて、運転を教え始めた。
「鍵を捻って、ブレーキをはずして、半クラッチにしてギアチェンジして発進……」
騎士たちは興味深々でリトネの動作を見守っている。
すると、いきなり車が動き出して、初めて感じる感覚に驚いた。
「は、早い!」
「自転車なんかより、もっと早いぞ!」
中には車酔いする体質のものもいたが、大部分は喜んでいる。
「リトネ様!次は私に運転させてください!」
何人も動かし方を勉強したいという者が現れる。
リトネはリトルレットにも手伝ってもらって、手取り足取り車の操縦を教えるのだった。
「え、えっと……本当に大丈夫なのか?こんなでかい鉄の車を御するなんて……」
「大丈夫だよ!ボクも最初は怖かったけど、少しずつやっていけば誰でも運転できるようになるから」
運転席に座ったトーラはびくびくとハンドルを握り、助手席のリトルレットが励ます。
「ほら!前方確認!ブレーキ踏むのが遅い!クラッチをはやくはなして!」
リトルレットは容赦なくトーラを指導する。
「こらっ!何べん言えばわかるんだ!やりなおし!」
「ひ、ひいいっ!」
自分よりはるかに小さなリトルレットに怒られて、半泣きになるトーラだった。
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