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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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領地拡大

イーグルの思惑は当たり、国王ルイは簡単に100万アルの借金の相殺と引き換えにアッシリア領のシャイロック家の引渡しを認めた。
「こ、これでいいかな?爺」
ルイ17世は、イーグルが恐ろしくて言われるがまま新たに作られたアッシリア領の領地拝領証明書にサインする。
「陛下、結構ですな。これを機会にお願いがあるのですが……」
「な、なんだい?」
答えるルイの顔は引きつっている。
「なに、大したことではありませぬ。少し前の事件で没落した貴族や騎士たちから返還された領地の中には、未だに金額が折り合わず買い手がつかないものもありましょう。そのようなものを、我がシャイロック家で引き取りたいと思います」
イーグルにニヤニヤと笑いながら、自領の領地拡大を王に迫る。
「そ、それは爺の好きなようにすればいい」
「かしこまりました。では、貸してある借金に見合った価値をもつ領地を選ばせていただきましょう」
邪悪な笑みを浮かべて、宰相は退出していく。そばで聞いていた大騎士ゴウライは、強引な彼のやり方に顔をしかめていた。
「……よろしいのですか?このまま放置しておけば、シャイロック家の領地はますます広がっていくばかり。やがて王家の力すら超えてしまうのでは……」
「だ、だからといって仕方ないだろう!それともなにかい?君がシャイロック家から借りている残り900万アルを肩代わりしてくれるのかい?」
「い、いや、それは……」
ゴウライも口ごもる。彼にそんな金はないし、国庫にも余裕はない。
ただでさえイーグルの手腕でなんとか黒字を出せている程度の財政では、直轄地を切り売りする以外に借金返済の方法がないのである。
「……税を上げるというのは……」
「爺が宰相である以上は無理だ。頑固だからアルテミックの時代と同じ五公五民を守り続けている。
くそっ!僕たちみたいな王族でも節約させられているんだから、平民からもっと絞ってもいいのに!」
ルイは悔しそうに頭をかきむしる。
「……商人から税を取るというのは?」
「それも考えたけど、どうやって取ったらいいのかわからない。そもそも卑しい商人から金を集めるって、身分が高いものがするべきことじゃない」
ルイはあれは駄目、これも駄目と言って自ら動こうとしない。結局のところ、長年政治を廷臣に任せて放蕩を繰り返したせいでまともに国家運営をするノウハウがないのだった。
「まあ、今はあの爺にいい気にさせておけばいいさ。せいぜい領地を拡大させて、シャイロック家を栄えさせている気にさせておけばいい。どうせ爺が死んだら平民上がりの馬鹿な小僧が後継者なんだ。なにか難癖つけて領土と財産を没収すればいい。逆らえば全軍でつぶしてやる。馬鹿な爺は膨らむ泡の上に乗っているだけなのさ」
くくくと笑うルイの目は、限りなく暗くにごっていた。
イーグルの死を待ってシャイロック家から一気に財産と領地を没収すると楽観して笑っている彼だったが、ゴウライはその笑いには同調できなかった。
(そうかな?宰相の孫、リトネとかいったか?わずか12歳でリリパット領で魔物退治をして、小さな勇者と呼ばれている剛の者だ。宰相が王都に滞在していた間も、領主代行の役目を立派に果たしたと聞く。もしや、リトネとは宰相をも超える逸材なのではないか?だからこそ、宰相は領地を拡大させているのではないだろうか。いずれ独立するつもりで……)
下手に手をだすと王家の方こそ返り討ちにあうのではないかと思い、ゴウライの背筋が寒くなる。
「……今は宰相の好きにさせるしかないでしょうな」
「ああ、今はな」
前者は少しでも今の王国を永らえさせたいと切実に思う者であり、後者はじっと息を潜めて棚ぼたを狙う者だった。
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