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独立
「では、残りの二人を攻略しても……魔王を倒しても……」
「ああ。一時的に破綻を遅らせることはできるかもしれぬ。だが、ゆっくりと国は破綻へと向かっておる。それはとめられぬであろうな」
イーグルの言葉に、車の中は沈黙で満たされた。
しばらくして、リトネは問う。
「では……どうすれば世界を救えるのでしょうか」
「ふふふ。何を恐れるか。ワシが言ったのは『ロスタニカ王国』の破綻じゃ。国が滅びても、世界が破滅するとはかぎらん」
「え?」
思わずイーグルの顔をみると、彼はにやりとした笑いを浮かべていた。
「ここに新しいものの息吹があるではないか。古く澱んだロスタニカ王国を滅ぼし、その灰の中から新たにシャイロック王国を生み出すのじゃ。貴様の手によって」
イーグルは自動車をなでながら、高らかに笑った。
「ふえっ!わ、私が王国を造る?」
「どうじゃ?できぬか?男として生まれたのなら、天下を望むは本懐ぞ!」
そういってリトネを煽る。リトネは冷房が効いているのにもかかわらず、汗びっしょりになっていた。
「……お爺様はもっと穏やかだと思っていましたが。意外と過激ですね」
「ふふふ。これでもワシは若いころはそんな野望を持っておった。じゃが、いつしかその夢も忘れ、大貴族で国の重臣という身に甘んじておった。しかし、貴様の若さと才能なら、その夢を託せる。どうかワシが死ぬ前に、王となったお前の姿をみせてはくれんかのう」
鼻息荒くリトネに迫ってくる。
「……私自身としては、大貴族の坊ちゃんで充分満足なのですが」
「じゃが、このままでは王家はシャイロック家を潰しにかかるであろう。ワシが生きている間は恐れて手をだしてこないだろうが、死ぬか引退して影響力が薄れたと見ると、一気に襲い掛かってくるじゃろう。貴様はすべてを王に献上して、元の平民に戻るか?」
「それは……いやですね。もうシャイロック家は私の家ですし、婚約者や部下に対しても責任がありますし……」
シャイロック家に来てからできた親しい人の顔が浮かぶ。彼らの居場所をまもる責任がリトネにあった。
「そうであろう。ワシが言うことがただの妄想であればそれに越したことはない。だが、事実だとすれば、何をどうしてもロスタニカ王家と戦わねばならなくなる。ならば、独立の準備をしておくのじゃ」
「わかりました。西部一帯の他家の貴族に対しても、わが家の傘下に入らざるをえなくなるように、経済的な支配を強めていきましょう」
しぶしぶリトネは独立の準備にかかることを了承するのだった。
「それでよい。ワシは王都に赴き、宰相の立場からひそかにシャイロック家の独立を支援しよう」
「お爺様、王都にいかれるのは危険なのでは?周囲は敵だらけです」
イーグルは心配するリトネの頭をポンポンと叩く。
「大丈夫じゃ。貴様がくれたシャツとモモヒキもある。そうそう暗殺者になど遅れはとらん」
「しかし……」
「シャイロック家は貴様に任せて、ワシは王都で睨みを効かす。独立の準備の時間くらいは稼げるじゃろう。その間に力を蓄えるのじゃ」
イーグルは豪快に笑うのだった。
シャイロック家に戻ったイーグルは、再び王都に向かう。
三ヶ月留守にしただけなのに、早くも政務は滞りがちになっていた。
「年末に行われる、廷臣たちの人事考課はどうなっておる?」
「そ、それが、まだ資料が整っておりませんので……」
言い訳する担当部署の官僚をしかりつける。
「馬鹿者!もう一ヶ月ほどしか期限がないのじゃぞ!今日から昼夜を問わず行え!」
「ひいい!」
怠けていた官僚たちに鞭をうち、溜まっていた政務に取り掛かる。
自ら寝食を忘れるほど政務に打ち込む彼により、緩みがちだった風紀は更正されて、官僚たちにも緊張感が戻ってきた。
一通りの仕事を終えたイーグルは、いよいよシャイロック家の独立のために動き始めた。

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