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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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破滅の原因

数日後
シャイロック軍は周辺の盗賊を一掃し、領都アリアに平和をもたらした後、アッシリア遺臣団に任せて帰途に着く。
「けっして悪いようにはせぬ。本来の主が帰ってくるまで、しっかりとアリアを守るがよい」
「ははっ!」
元執事の老人に領主代行を任せ、イーグルは自動車に乗り込む。
「勇者リトネ様!アリアを救っていただきまして、ありがとうございました!」
「姫様とお幸せに!」
運転席で手をふるリトネに感謝の言葉を投げかける市民たち。
民たちの感謝の声を浴びながら、一行はシャイロック領へと戻っていった。

領に戻る道の途中、助手席に座ったイーグルから話しかけられる。
「順調にひろいんを攻略しておるのう」
イーグルは前を走る馬車をみて苦笑する。来るときイーグルが乗っていた馬車には、リトネの婚約者たちが乗っていた。
「うわ!広いです!」
「……豪華」
「ボクは自動車のほうがいいけどね。あの速さになれたら、馬車って遅くて遅くて……」
「あ、あたいがこんなのに乗っていいのかな?」
彼女たちは、はじめて領主が乗る豪華な馬車にそれぞれ感嘆の声を漏らしていた。
「ええ。彼女たちはもう世界を破滅に導くビッチにはならないでしょう。あと二人です」
リトネもヒロインたちの攻略がうまくいっていたので、上機嫌だった。
しかし、次のイーグルの言葉で冷水を浴びせられたように感じた。
「そのことだがな。ワシは最近思うのだ。女神の予言は間違ってはいないが、ほんの表面的なものしか捉えていないのではないか?たとえ小娘たちを更正させても、世界は破滅に向かっておるのではないのか?」
「えっ?」
思いがけないことを言われて、リトネは隣のイーグルを見る。彼はみたこともないような厳しい顔をしていた。
「どういうことです?」
「魔王を倒して王となった勇者が奢り高ぶり、圧政を敷いたせいで世界は滅びる。そのように勇者をたぶらかしていたのは彼女たちだと言っていたな」
「たしかに」
リトネは頷く。
「だが考えてみるがいい。いかに魔王を倒した勇者が馬鹿をしようとも、小娘どもが勇者をそそのかそうとも、所詮は個人じゃ。家臣たちが実務を担当せねば、国は動かぬ」
「……」
「勇者や小娘たちは、いいように操られたのではないか?借金を帳消しにしたい貴族どもや、商人の金を狙って私腹を肥やそうとした役人どもによって、権威を利用されたのではないだろうか」
イーグルの声は限りなく苦かった。
「お爺様がおっしゃりたいのは、まさか……」
「そうじゃ。勇者アルテミックがロスタニカ王国を作り上げた当初は、魔王を倒した勇者に人々は従い、国を健全に運営にできていたであろう。しかし400年が経過し、建国の理念もアルテミックの理想も権威を失い、王国は疲弊しておる。仮に魔王が復活しなくても、勇者が王にならなくても、ロスタニカ王国の命脈は長くはないであろう」
イーグルはゆっくりと、王によって暗殺されそうになったことをリトネに話した。
「そこまでひどい状況なのですか……」
「進取の精神を失った者は、ゆっくりと腐っていく。それが国でも同じじゃ。何百年も前の先祖の功績に胡坐をかいていた貴族どもは、商人にとって代わられようとしておる。だが、現実を見ないで過去にすがり付いて改革を拒むものは、王をはじめとしていくらでもおる。彼らはずっと覚めない夢をみていたいのじゃろう。アルテミックが世界を救ったので、民は感謝して税を納めつづけ、その子孫は永遠に栄華を極めるのだという夢にな」
イーグルは吐き捨てるように言う。根本的な世界の破滅の原因は、今の社会制度にあるといわれて、うすうすはそのことを感じていたリトネは何もいえなかった。
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