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謝罪
アッシリア領都 アリア
町は悪代官と盗賊の支配から解放されたことで、民たちは夜通し騒いで喜んでいる。
館からは、町のあちこちでかがり火が炊かれ、人々がその周りで喜び舞い踊る姿が見えた。
そんな中、リトネは執務室で今回の事件の後始末をするために指示を出している。
「アクターの資産と、盗賊たちが溜め込んでいた財産はすべて没収してまとめておくように。特に祭壇にあった「聖なる水瓶」はこれから必要になるから、直接ここにもってきてくれ」
「はっ」
リトネの命令を受けたトーラの直臣たちが走り出す。
「シャイロック領まで早馬を出してくれ。治安維持と交易路の確保のために軍隊を送ってもらう。もちろん食料も大量にな。あと、アッシリア湖が糞水で汚染されているから、宝物庫から水を浄化するためのアイテムをもってきてもらうように伝えてほしい。これを爺さんに渡してくれ」
「かしこまりました!」
元アッシリア家の執事であった老人を使者にして、事の顛末を書いた手紙を持たせて送り出す。
「将軍は町の警護を頼む。気が緩んだ隙にほかの盗賊たちが襲ってくるかもしれない」
「承知しました!勇者様!」
サラマンダーと戦ったリトネの強さをみて、将軍はすっかり心酔していた。
「ふう。これで一息つけるかな」
魔公と戦った後も休まず指揮を執り続けたリトネが、疲れを感じて執務室の椅子にもたれかかったとき、ドアがノックされる。
「どうぞ」
「邪魔するよ」
入ってきたのは、セクシーな踊り子のような赤色のドレスを着たトーラだった。
エキゾチックでトーラの美しさを引き立てている。
「どうしたの?その服」
「家臣たちから言われたんだ。アッシリア家は再興するんだから、姫らしい格好をしろってな。どうだい?」
リトネの前で優雅に舞を踊ってみせる。リトネはその神秘的な舞にうっとりとなった。
「うん……きれいだ」
「あ、ありがとう」
トーラは頬を真っ赤に染める。しばらくもじもじとしていたが、ついに決心したように口を開いた。
「あ、あのさ。あたいを婚約者っていったのは、冗談だよな。家臣たちは本気にしているみたいだけど……」
そういうが、何か期待したような目を向けてくる。
「いや、本気だよ」
それに対して、リトネはやさしく答えた。
「そ、そうか。だけど……その。あたいを気に入ってくれたのはうれしいんだけど、それならどうしても謝らないといけないことがあるんだ」
そういうと、トーラはその場にいきなり土下座する。
「すまねえ!実はリンとかいう女の子と、メイドをさらったのはあたいたちなんだ!」
自らの罪を白状し、額を床にこすりつける。リトネはただ黙ってそれを見ていた。
「あの子達を餌にして、あんたを人質にすればアッシリア家が再興されて、民を救えると思ったんだ。同時に憎い仇であるシャイロック家にも復讐できると思ったんだ」
「……」
「だけど、あんたたちがアッシリア家を潰したのは、ちゃんと理由と立場があってのことで、悪意があったわけじゃなかったことがわかった。逆恨みだったんだ。それに、何の関係もない少女をさらって危険にさらしたのは、あきらかに間違いだ。本当にすまねえ」
トーラは謝罪を続ける。
「悪代官アクターも倒したし、『砂漠の黒炎』も壊滅した。このアリアはあんたに任せれば大丈夫だろう。もう思い残すことはねえ。あたいはあんたの奴隷になって、一生かけて罪を償うから、家臣たちと民を頼む」
そういうと、トーラは自ら「隷属の首輪」をつけた。
しかし、リトネは苦笑して首輪をはずす。
「……婚約者を奴隷にする趣味はないよ」
そういってトーラの手をとって、立ち上がらせる。
「……いいのかい?」
「うん。もし償いがしたいと思ったら、婚約者として償ってくれ」
リトネは明るく笑って、トーラの罪を許した。
「……ありがとう」
トーラは感極まったかのように涙を浮かべ、リトネに抱きつく。
(魔公を倒す強さ。人を許す優しさ。こいつはやっばりガキじゃねえ。あたいよりよっぽど大人だ)
リトネの中に大人の男性の寛容さを見たトーラは、幸せそうに微笑むのだった。

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