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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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炎のルビー

ピラミッドの外では、火達磨になったリトネが必死に地面を転げまわっていた。
(まずい!このままだと息ができなくて死んでしまう。火を消さないと)
とっさに体を気の膜で覆ったおかげで火傷は免れたが、その上から油をかけられて火をつけられたのでなかなか火を消すことができない。
「ゆ、勇者様をお助けしろ!」
あわてた将軍が部下に命令するが、彼らの前にも別のモンスターが迫ってきていた。
「キシャー!」
赤トカゲが、いつのまにかピラミッドから出てきて叫び声とともに炎を吐いて遺臣たちを威嚇する。そして一斉に襲い掛かってきた。
「く、くそっ!」
リトネを助けるどころか、死に物狂いで自分の身を守ることで手一杯になる。
それらを横目に見ながら、サラマンダーはリトネに迫ってきた。
(くそっ!油が原因の炎を消すにはどうすれば……)
リトネは地面を必死に転がりながら考える。
(たしか、水をかけても消えないんだよな。そういう場合は、濡れタオルで空気を遮断するんだった)
前世の防災訓練を思い出して応用を考える。
「『柔気装』」
体にまとっている気の膜の上に。さらにもう一段薄い膜を纏う。すると、炎は消えていった。
「ぷはっ」
ずっと呼吸を止めていたリトネは、気を解いて新鮮な空気を吸う。
しかし、すぐ目の前に赤トカゲが迫っていた。
「うわっ!『召喚』」
あわてて杖を掲げて、上空にトラックを呼ぶ。
「押しつぶせ!」
スズーンと音を立ててトラックが地面にめり込むが、サラマンダーはすばやい動きでかわしていた。
「くっ!にげるな!」
再びトラックを上空に召喚して押しつぶそうとするが、やっぱり避けられてしまう。
「くそっ!こいつはツチグーモと違ってすばやいのか!」
必殺技を破られて、大苦戦するリトネだった。
(なんとかして相手の動きを止めないと……)
リトネはサラマンダーと対峙しながら考える。
(『剛竜拳』じゃだめだ。奴の炎と油を止めるのに精一杯だ。なら、『柔竜拳』を使って……)
両手はサラマンダーに向けて気の盾をつくって防御しながら、リトネは足に『気』を集中させる。
地面に柔らかい気を這わせた。
(よし。かかってくれよ……)
地面に布団のように柔らかい気の面を作りながら、ジリジリと後退する。
サラマンダーは、リトネに攣られるように一歩前進した。
リトネは炎に押されるように下がり続け、サラマンダーはさらに押し込む。
後ろ足が完全に柔らかい気の領域に入った瞬間、リトネは柔らかい気の両端を捲り上げた。
「くらえ!新技『柔気結』」
サラマンダーは一気に柔らかい気の布団に包まれて、拘束される。
動きが止まった瞬間、リトネはサラマンダーの頭に向かって拳を振りぬいた。
「『転送拳』」
リトネの拳が触れた部分がどこかに転送され、消失する。
サラマンダーは頭を失い、黒い血を吐きながら倒れていく。その姿が変わっていき、首のない女の死体が現れた。
「うえっ……」
死体の生々しさに吐きそうになりながらも、リトネはその胸にかかっているネックレスに釘付けになる。
「これは『炎のルビー』か。魔公を倒すと出現するヒロインたちの守護石になるアイテム。これをトーラに渡さないと」
リトネはネックレスを回収し、ピラミッドに入っていった。
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